
日本と台湾、韓国の医療、法曹の専門家たちは11月30日、東京大学に集まり、臓器移植ツアーと臓器乱用に関するシンポジウムを開催した(新唐人テレビ)
2019年11月30日、日本と台湾、韓国から 9人の医療、法曹、生命倫理の分野の専門家が東京大学に集まり、臓器の違法取引と移植ツーリズムに関するシンポジウムを開催した。各国の専門家は、人道犯罪が疑われる中国への移植ツアーを阻止するために、法整備や各国の取り組みについて意見交換した。 日本や中国を含む65カ国が加盟する国際移植学会(TTS)が2008年に実質的な渡航移植防止を宣言した「イスタンブール宣言」から11年経つ。これに合わせ、3カ国の有志者組織は東京大学の山上会館で、「臓器移植ツーリズム防止」をテーマにした、アジア初の国際シンポジウムを開催した。共催は日本移植ツーリズムを考える会、SMGネットワーク、台湾国際臓器移植医療協会(TAICOT)、韓国臓器移植倫理協会(KAEOT)、大韓弁護士協会、高麗大学校国際人権センターなど。 1990年代以降、医療技術と医学の発展に伴い、世界の臓器移植の数は徐々に増加した。2000年以降、中国での移植手術件数は、爆発的に増加した。2006年には国際的な調査により、中国では良心の囚人などから臓器を強制的に摘出するという「臓器バンク」の存在が指摘された。2008年、TTSはトルコの首都イスタンブールで、臓器移植および移植観光の商業化を厳しく禁止すると宣言する「イスタンブール宣言」を採択した。これは、さまざまな国で、臓器提供および移植の倫理的指針となっている。 日本医学会の前会長で自治医大前学長、東京大学名誉教授の高久史麿氏が登壇し、臓器移植ツーリズムの問題について懸念を表明した。高久氏は、インターネットの普及により海外移植を選ぶ人が増加したと指摘した。また、国内法の改正により、海外で移植手術を受ける人の数は減らすことができるが、依然としてその数を把握することは難しいと述べた。
日本医学会の前会長で自治医大前学長、東京大学名誉教授の高久史麿氏(新唐人テレビ)
シンポジウムは、4つのトピックに分けて、意見が交された。1部はイスタンブール宣言以降の世界情勢、2部はアジアにおける臓器売買および移植ツーリズムの状況、3部は同議題における倫理的問題、4部はアジア主要諸国の法整備状況について。 国際人権弁護士で、カナダの勲章受章者、2010年のノーベル平和賞候補のデービッド・マタス弁護士は、次のように述べた。「無実の良心の囚人に加えて、犠牲者は主に信仰を持つ法輪功学習者であり、最近ではウイグル人の犠牲者も含まれる」 「イスタンブール宣言から11年経つが、中国は依然として臓器移植を乱用しており、良心の囚人が犠牲となっている」とマタス氏は語った。また、宣言を機能させるための効果的な基準と規制が必要だと述べた。 沖縄の琉球大学名誉教授で移植外科医である小川由英氏は、日本人の移植希望者は以前はアメリカだったが、2006年以降、中国が主要な渡航先となったと述べた。 国立台湾大学病院雲林分院の泌尿器科代表・黄士維医師は10年以上、中国における臓器移植問題を観察および研究してきた。臓器移植のために台湾から中国に渡航した数百人の患者、移植医師、医薬品業者にインタビューした。「大量に供給された出どころ不明の臓器の背後には、人道危機が潜んでいる」と指摘した。 「臓器移植は非常に専門的な問題で、徹底的な研究がなされなければ、共産党に騙されてしまう」「調査の結果、今日まで中国の移植臓器の出どころは、主に法輪功学習者などであると考えられる。彼らは非人道的に迫害されている弱者グループである」 黄医師は、過去20年間で、台湾から少なくとも4000人が本土に行き、肝臓および腎臓の移植を受けたと述べた。一例として、ある男性患者のために、非常に短い期間で8回の腎臓移植が相次いで行われた。ほかにも、少なくとも7人が旅行代理店を通じて、臓器移植を受けた。 台湾では臓器強制摘出が暴露され、広く知られるようになった。そのうえ、国際臓器移植医療協会の積極的なアプローチにより、2015年、「人体臓器移植法改正法案」が公布され、渡航者に登録を義務付けた。以後、渡航移植者は大幅に減少したという。 2016年に韓国臓器移植倫理協会に加盟した韓国の高麗大学医学部のハン・ヒチョル教授は、韓国の臓器移植状況を説明した。韓国では平均臓器の待ち時間が4年以上、米国でも4年、カナダでは6~7年かかるが、中国では数週間や数カ月であることは不自然だと指摘した。 ハン教授は、中国で移植を受けた韓国人の数は2003~05年にピークに達し、それ以後は減少していると述べた。中国の情報統制により、渡航者データを取得することはできないが、全国民を対象とする国民健康保険サービスからデータを照会したいと述べた。また、調査結果に基づき、議会と政府に違法な臓器移植を阻止するための法的措置を講じるよう求めていくと語った。 日本のジャーナリストである野村旗守氏は、日本のメディアや政界が中国での臓器取引など、人権問題についてほとんど報道していない理由を分析した。野村氏は、日本のメディアが持つ中国への贖罪意識、そして、さまざまな分野への中国共産党の浸透が原因で、日本のメディアはこの問題を避けていると考えていると述べた。 野村氏は2016年に臓器移植を考える会、2018年にSMGネットワーク(Stop Medical Genocide)を立ち上げた。また日本政府に何度も中国臓器移植問題に関する懸念を伝えた。一連の働きかけにより、11月には自民党の山田宏参議員が国会で同問題を取り上げた。外務省は、国際社会から非難の声が上がっていることを認知していると回答している。さらに、120人近くの地方議員がSMGネットワークに賛同し、これまで、86の地方自治体が移植法整備への意見書を可決したと野村氏はこれまでの取り組みを紹介した。