第2回 生体臓器収奪の責任を追及する

15年にわたる生体臓器収奪の観察・研究に基づく法律の専門家が、さまざまな法的観点から生体臓器収奪の罪状を探り、生体臓器収奪を効果的に防止・撲滅するために具体的に提言します。
2021年9月18日
1.David Matas

デービッド・マタス

カナダ:国際人権弁護士

イギリスのオックスフォード大学卒業。難民、移民、人権の法律を専門とする。2006年7月、故デービッド・キルガー氏とともに、独自の調査により、「中国における法輪功学習者を対象とした『臓器狩り』調査報告書」(戦慄の臓器狩り)を発表。この調査が評価され、マタス氏とキルガー氏は、2009年にドイツに本拠を置く国際人権協会(IGFM)から人権賞を受賞し、2010年にはノーベル平和賞の候補となる。過去10年間、マタス弁護士は40カ国以上を訪れ、中国の良心の囚人、特に法輪功学習者から強制的に臓器を摘出する行為への認識を高めてきた。この中国の組織的犯罪を調査したドキュメンタリー映画「ヒューマン・ハーベスト」(人狩り)は、2015年にピーボディ賞を獲得している。

【日本語訳】

演題:犯罪と罰則: 中国における良心の囚人の臓器を目的とした殺人

はじめに

中国で良心の囚人が臓器のために大量に殺害されてきた証拠は、2006年から入手可能である。これらの殺害が行われていたという結論に至った理由のひとつは、もちろんそれだけではないが、中国の国内においても、また国外においても、これらの行為を禁止したり罰したりする法律が存在しないからである。

この15年の間に、法的な状況には様々な変化があった。このプレゼンテーションでは、中国国内および中国国外における状況について、概要を説明する。

中国の状況

中国では、2006年に政府が法輪功学習者を中心とする良心の囚人を臓器目的で大量に殺害しているという証拠が発表された後、臓器移植の濫用を明確に認めた旧法を廃止することなく、臓器移植の濫用に向けた新法を制定した。国務院は2007年3月に臓器移植に関する規定を制定し、2007年5月に発効した。この法律は、同意なしに生きたまま臓器を摘出することを禁じている。また、生前に死後の臓器提供を望まない意思を表明した死者からの臓器提供も禁止している。

生前に、臓器提供に同意あるいは反対しなかった故人の臓器提供については、配偶者、成人した子供、両親の同意が法律で認められている。しかし、身元不明の遺体、あるいは近親者が現れない死者からの臓器提供についてはどうだろうか。この点について、2007年の法律には何も書かれていない。

これらの疑問については、かなり前に遡る2つの法律が示している。1979年の中国衛生部の規定によると、医学部を含む教育研究機関が、教育や研究を行う際に、引き取り手のない遺体に対して解剖を行うことができると定めている。誰の同意も必要としない。

中国の広範な政府機関が採用した1984年の「死刑囚の死体または臓器の使用に関する規則」にも同様の規定がある。これには、死刑囚の引き取り手のない遺体や、遺族が引き取りを拒否した死体を「利用することができる」と定められている。

2007年の法律では、1979年や1984年の法律が改正、あるいは廃止されていない。しかし、中国におけるこの分野の法的な問題は、単に法律に隙間があることや、古い法律を廃止できないことに留まらない。

中国の現実は、共産党が法制度を支配していることである。中国共産党は、法律の適用において、自らを告発したり、自らの行動の障害や妨げとなることは一切行わない。共産主義の中国では、法律は党と不仲の人たちに対してのみ使われる。中国に法の支配は存在しない。法の支配の代わりに存在するのは、党の支配である。

中国では、良心の囚人を臓器目的で大量に殺害することが、国家運営として制度化されている。刑務所制度や政府病院の運営を通じて行われ、その中には軍部が営利事業として運営する病院も含まれる。

通常、法輪功に限らず、恣意的に拘束された良心の囚人の遺体は、家族に引き取られることはない。家族は拘束された親族の居所を知らないかもしれない。拘束の事実さえも知らないかもしれない。たとえ知っていても、家族は往々にして、当局と関わることに消極的である。中国共産党の優位性を脅かすと見なされる行動・信念を、家族が犠牲者に棄却させなかったことを非難されることを恐れるからだ。

良心の囚人を大量に殺害して臓器を得ることは、党にとって2つの目的を兼ね備えている。 殺人は、党が政敵と見なすものを排除できる。臓器収奪は、医療制度の資金調達に大きな役割を果たす。中国での臓器売買は数十億ドル規模のビジネスである。党が中国を社会主義から資本主義に移行させ、国が医療部門から多額の資金を引き揚げた後、医療機関が国民に門戸を開き続けることを可能にし、医療制度の全般的な資金調達に役立てられている。法律がどのように制定されようとも、党がこの臓器売買を停止した、あるいは停止することは、ありえない話だ。

国際的な状況

デービッド・キルガー氏と私が法輪功学習者を標的とした臓器売買に関する最初の報告書を作成した当時、国境を越えた臓器売買を禁止する国際文書は存在しなかった。それに類するものは、国際組織犯罪防止条約(The United Nations Convention against Transnational Organized Crime)の「人身売買を防止し、抑止し及び処罰するための議定書」であり、臓器摘出を目的とする人身売買を禁止している。

中国は条約と議定書の両方の締約国である。このため、条約と議定書の作業を担当する国連の官僚機構である国連薬物犯罪事務所は、用語が似ているように見えても、臓器摘出を目的とした人身売買は臓器売買とは異なり、条約と議定書は臓器売買を対象としないという立場をとっている。

そこで、欧州評議会が交渉し、2015年に「ヒトの臓器売買禁止条約」を採択した。この条約は、締約国に対し、同意なしまたは金銭的動機による臓器摘出を罰する法律の制定を求めている。この法律は、締約国の国民または永住権保持者によるこの行為が世界のどこで行われても、罰則を科す必要があるとしている。

現在、11の批准国と、署名はしたが批准していない15か国がある。批准国は、アルバニア、クロアチア、チェコ、ラトビア、マルタ、モンテネグロ、ノルウェー、ポルトガル、モルドバ共和国、スペイン、スイスの11か国である。これらの11か国は、原則として条約を遵守するために必要な法律を整備しているはずである。

この条約への加入は、欧州評議会の加盟国に限られたものではなく、実際、非加盟国のコスタリカは、批准はしていないが署名はしている。オブザーバー国は自発的に署名することができる。オブザーバー国以外の国は、理事会の閣僚委員会からの招請を必要とするが、これは言うまでもなく、要請できる。コスタリカのほか、カナダ、米国、メキシコ、バチカンがオブザーバー国である。

国家的な状況

欧州評議会の11か国以外にも、幾つかの国が必要な法案を通過させた。まずはイスラエルが先陣を切った。

イスラエルでは2008年に、遺体から摘出した臓器に対する報酬の受け取りを禁止する法律が制定された。この法律では、臓器の仲介も禁止されている。臓器の摘出や移植がイスラエル国内、国外のいずれで行われた場合も禁止される。さらにこの法律は、法律の基準に反して海外で行われた移植手術の健康保険制度による払い戻しを禁止している。

台湾は2015年6月、死刑囚の臓器を使用することや、臓器の売買や仲介を禁止する法律を制定した。この法律では、特に移植ツーリズムを禁止している。海外で臓器移植を受けた患者が、国費で医療保障を受けるためには、臓器の出所を法的に証明する必要がある。

2016年12月のイタリアの法律では、臓器の取引、売買を世界的に罰則化している。ベルギーは2019年4月、臓器の商取引禁止する既存法を治外法権化し、海外で行われた場合でも犯罪を起訴できる法律を制定した。同法は、ブローカーや臓器を移植されるレシピエントを罰するものである。

結論

他の多くの国の司法当局は、積極的に法改正を検討しているが、今のところ制定はしていない。国連には193か国が加盟している。必要な法律を制定している国の数は、国際社会の規模に比べれば、情けないほど少ない。

2006年、中国で大勢の法輪功学習者が臓器のために殺害されたという最初の報道があり、全体としていくつかの変化があったが、問題は依然としてそのままだ。中国での良心の囚人の臓器を目的とした大量殺戮を止める上で、そして中国国外が殺戮の共犯者となることを止める上で、十分な変化は為されてこなかった。より多くのことをする必要がある。

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2. Carlos Iglesias

カルロス・イグレシアス・ヒメネス

スペイン:人権弁護士

特に中国に関心を寄せる人権弁護士。江沢民元国家主席ほか4人の中共指導者を大量虐殺と大規模な拷問の罪で起訴した刑事事件で、法輪功学習者側の弁護士を務める。人権法基金の欧州理事。ジュネーブの国連人権理事会に数回参加し、法輪功への迫害について報告している。

【日本語訳】 「生体臓器収奪の阻止と撲滅に関する国際サミット」にお招きいただきありがとうございます。私にとって、中国の人権擁護活動に携わってきた18年間の経験を短い時間で簡潔に申し上げることは簡単ではありません。私はこの期間を通じて、中国の5,000年の伝統文化だけではなく、真の中国の人々や国の根底にある価値観や信念を敬愛し尊重するようになりました。

しかし、何十年にもわたり、中国の良心は失われ人の心は傷つけられています。中国共産党(中共)独裁政権下で起こっていること、特に生きている人間からの臓器収奪という犯罪は、実に悲しい問題です。

この犯罪行為について語るとき、私たちはその特異性を意識しなければなりません。独自の性質があるのです。この残虐行為は、人類史上、比類ないものです。

中共独裁政権は数十年間にわたり、中国国民の個人的および集団的自由を制限し消滅させてきました。特に信念への迫害に重点が置かれています。個人が何を考え、何を信じるのか。 究極的には個人にとって最も大切な本質的な価値観、個人の内にあるものが標的にされてきました。

中共が精神的な信条を迫害する主な目的はここにあります。生体臓器収奪という犯罪行為には、他の臓器関連の犯罪とは根本的に異なる3つの特徴があります。

第一に、中共の目的は、精神的な信条を持つ人々を抹殺し、物理的に排除することです。中共の第一の目的は、キリスト教徒やチベット人、仏教徒 、そして数千万人に及んでいた法輪功学習者などの良心の囚人(無実の人々)を排除し消滅させることであり、論理的にはジェノサイドの意味合いを持ちます。しかし、これは中共が追求する唯一の要素ではありません。

生体臓器収奪犯罪の二つ目の特徴は、中共自身の腐敗した富の追求です。

江沢民元総書記は、1999年に、中国国内の数千万人もの法輪功学習者やその他の信仰を持つ者に対して迫害を始めたとき、中共の全組織を巻き込んだトップダウン戦略を考案しました。その根本的な目的は、中国人が抱く強い信念を根絶することでした。

明らかに生じた事態は、私が「最終解決」と呼ぶ者への追求でもあります。中共が行き着いた最終的な倒錯は、人々を排除して殺害する方法だけでなく、これらの殺人と臓器収奪犯罪を通じて私腹を肥やすという、悪魔的と言える方法が考案されました。

中共は人々を生きた臓器バンクとして扱い、切り刻んで臓器を高値で売り、中共組織に数百万ドルの金額をもたらしたのです。中共は、保健当局や軍隊、補給部門のみならず、プロパガンダ機関も動員しての当局機関全体が共謀する戦略を考案しました。これが三つ目の特徴へと繋がります。

生体臓器収奪犯罪の三つ目の特徴は、中共がプロパガンダ的な手法で海外でのイメージ刷新を試みていることです。中共は、あたかも中国の移植システムが効率的で発達した実績あるものであるかのように見せかけて犯罪を隠し、理論的に国際社会を騙しています。臓器提供は中国では全く存在しないにも関わらず、大成功を収めていることを売り込もうとしています。

これほどまで凶悪に編み出された犯罪はありません。人々を殺害し、数百万ドル産業を生み出し、臓器提供がまったく存在しない臓器提供システムから負のイメージを洗い流そうとしているのです。

この犯罪から人々を守る法律はありません。事前に臓器を選別された人間が手術台に乗せられ、腹部を切り開かれ、肝臓・腎臓・心臓を摘出され、その過程で殺害されます。その臓器に数十万ドル支払って中国に移植手術を受けに来た患者に移植されるのです。私たちには、このような異常行動は思い付かないため、どの国にも法的な記述はありません。

これらの残虐行為を容認してはならず、無視してもならず、いかなる状況においても罰せられなければなりません。私たちは市民社会や一般の人々の心に訴えなければなりません。残念ながら、国際機関や西側諸国の政府は、今日に至っても生体臓器収奪犯罪に取り組んでいません。彼らにはこれらの犯罪行為を非難し、中共の独裁に立ち向かうための毅然とした態度と力強さがないのです。

多くの例が挙げられます。中共は、国連人権理事会や世界保健機関、国際連合そのものなど、実に多くの国際組織に浸透してきました。中共は、すべてを人知れぬように隠密に行い、社会や世界全般に知られることがないようにしてきました。そして成功しています。西側諸国の政府や国際機関、国際組織が共犯して沈黙を守っているからです。

2013年12月12日の欧州議会の決議、欧州議会の2016年7月の動議(48/2016)の可決は、加盟国が臓器収奪犯罪を非難し、各国が自国民に対して警告を発するよう求めました。しかし成果はありませんでした。

私の国スペインでは、臓器提供の分野では世界をリードし、違法な臓器売買犯罪を防止して罰するための刑法改正の先駆者でありましたが、この行為を非難するための行動をとっていません。

スペインでは、251,000人の署名がスペイン下院に提出されました。しかしスペイン市民の署名は、スペインの政治家を動かすことができませんでした。

このサミットを通じて、何が私たちを他とは違うものにさせるのかを認識してもらうために、市民社会、個人、人々の心に訴えるべき時が来ました。同時に、私たちを人間として結びつけるものは、生命への敬愛、信念の尊重、自由の尊重という特定の価値観を共有するからだということに気づく時が来ました。この恐ろしい犯罪を決して容認してはなりません。現状に終止符を打つように求める呼びかけもなされています。生体臓器収奪犯罪はもうたくさんです!犠牲者のために正義がもたらされなければなりません!

中共独裁政権は、個人の意志を金銭で買い取るか、賄賂を使うか、脅かすことで、うまく作動しています。小グループにそのようなことを行うことは可能ですが、果敢に声を挙げる数百万、数千万人の前では不可能です。

ですからこの世界サミットは、非常に重要なのです。人々が生体臓器収奪犯罪という残虐行為に気付くきっかけとなりえます。無数の人々が臓器のために殺害され、切り刻まれ、売られていきました。無数の人々です!

さらに悪いことに、この世界ではどれだけの人がこの事実を把握しているのでしょうか。沈黙を続けていいのでしょうか。これらの犯罪を野放しにしておいていいのでしょうか。

将来、正義によって裁かれるのはこれらの犯罪に手を染めた人物に留まりません。沈黙することで共犯となり、この残虐行為を円滑にし可能にしたすべての人々も正義を前に責任を問われるでしょう。

中国と世界全般の人権問題に携わる人権弁護士として、世界は目を覚まさなければならないと思います。世界は目を覚まさなければならないのです。何年も経っても、この犯罪が罰せられないままであることは不可能です。

市民社会は、国際機関や国際組織の共謀する沈黙に対して、強い抗議の声を挙げなければなりません。欧米政府の共謀する沈黙に直面し、良心のある人や思いやりのある人、人間として定義される価値観とは何かを知っている人は、その一歩を踏み出さなければならないのです。

人類はこれほどまでの残虐行為に直面したことは一度もありませんでした。人々を無知から目覚めさせることは巨大な挑戦です。今回のサミットはその挑戦に挑む素晴らしい機会です。

今回のサミットに参加できたことを心より感謝しております。質問がございましたら喜んでお答えいたします。

そして、このおぞましい生体臓器収奪が終焉するだけでなく、すべての犠牲者に正義がもたらされることを願っています。ご清聴に心から感謝申し上げます。

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3. Theresa Chu, Esq.

朱婉琪

台湾: 弁護士、台湾法輪功擁護弁護士代表。

国際人権弁護士。1999年の法輪功迫害開始以来、無償で被害者を弁護し、臓器収奪犯罪に関与した江沢民元党首と他の中共幹部を告訴する訴訟に積極的に取り組んでいる。台湾政府の顧問として台湾の人権法改正を支援するなど、影響力のあるリーダー。専門家として講演し、国際的な政府関係者、人権団体、国会議員に対して、人権問題や法輪功被害者による世界各国からの集団訴訟について講演している。「生体臓器収奪に反対する医師団」(DAFOH)の法律顧問。

【日本語訳】

演題:「生体臓器収奪の阻止と撲滅に関する世界宣言」の法的意味

生体臓器収奪の阻止と撲滅に関する世界宣言」(UDCPFOH)は、中国共産党(中共)による生体臓器収奪という最も極悪非道な蛮行を、21世紀の人類が制止する決意を宣言した、国際的な文書です。UDCPFOHは、いかなる個人や政権からも奪うことのできない絶対的権利を基盤とし、いかなる者も侵すことのできない人間の尊厳、人間の生命、身体、自由に対する基本的な権利の保障を含む普遍的な価値という核心的な原則を、そのまま礎(いしずえ)としています。また、UDCPFOHは、中共による人間の価値を深刻に侵す生体臓器収奪を阻止・撲滅するための措置を提案しています。

背景

第二次世界大戦で、人類は救いようのない激しい苦痛と損失に見舞われました。他方、それはまた、野蛮な人権侵害を、国際刑事法で最も苛烈な犯罪とする「集団虐殺罪」「拷問罪」「人道に対する罪」として罰するための、国際的な刑事司法を推進しました。しかし、上記のような虐待は依然として続いている上に、全体主義政権による政治的・経済的影響力の行使によって隠蔽され無視され続けており、防止されることもなく、その犠牲者を増やしています。中共による生体臓器収奪は最も極悪非道な蛮行として挙げられます。中国での臓器収奪は、拘束された法輪功学習者から生きたまま角膜を摘出してきた中国人外科医の元妻アニー(仮名)さんによって、2006年に初めて暴露されました。世界に物議を醸す暴露でした。医学界、法曹界、国際組織、各国政府による15年に及ぶ調査と証拠分析を経て「生きている人々から収奪され販売された臓器は、全体主義的な中共政権によって指揮された蛮行である」ことが確証され、中国へ渡航移植する患者や、臓器移植が発展するように中国を支えた専門家らが生体臓器収奪の共犯者になっているということも確証されました。この蛮行は、中国だけでなく、中国外にも影響を及ぼしているのです。

10年以上前、当時の国連(拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰に関する)特別報告者、マンフレッド・ノワーク教授が、中共に臓器収奪の疑惑を調査するよう要求しましたが、中共はただ要求を無視しました。2013年以来、世界の200万人以上の人々が、中共による生体臓器収奪に対して国連の調査を要求する誓願書に署名しました。欧州、アジア、アメリカ、オーストラリアの国会や地方議会も、中共による臓器収奪を非難する人権決議を可決しています。近年では、中共による生体臓器収奪を阻止し、思想の自由を守るために長年献身してきた五つの非政府組織が、この残虐行為の調査に積極的に参加し、中共による生体臓器収奪への認識・関心を引き出すために、国際シンポジウム、議会公聴会を開き、人権問題を取り上げる関連活動を展開しています。そして今年(2021年)、生体臓器収奪を阻止するための国際協力に一層尽力するため、五団体が合同で「生体臓器収奪の阻止と撲滅に関する世界宣言」(UDCPFOH)を発布したのです。

UDCPFOHの骨組み

第二次世界大戦後の70年間に、人権に関する重要な国際協定が次々と採択されました。戦争と虐待が人権・自由・正義を破壊した20世紀、国際社会は、基本的な権利と生命を守るための合意を、宣言や国際協定という形でまとめ、世界で実践に移してきました。UDCPFOHは、ここ70年間で締結された人権に関する国際協定の中核にある基準を、何よりも重要な、指針となる理念として明確に支持しています。協定には「世界人権宣言」(1948)「市民的及び政治的権利に関する国際規約」(1966)「拷問及びその他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰に関する条約」(1984)「生物学および医学の応用に関する人間の権利及び尊厳の保護に関する条約」(1997)欧州評議会の「ヒトの臓器売買禁止条約」(2015)があります。

私たちがここで懸念しなければならないことは、中共による生体臓器収奪は、臓器売買、移植ツーリズム、臓器摘出を目的とした人の移動など、深刻な犯罪システムの複合体であり、殺人や拷問、虐殺行為、人権に対する犯罪であるということです。

厳密に言えば、生体臓器収奪の犯罪構造は、複雑に連動しています。犯罪者は、全体主義政権から一般人にまで及びます。この犯罪は国際社会全域に波及しているのです。

国際および国家レベルでの臓器収奪の阻止と撲滅

生体臓器収奪は、法輪功学習者の虐殺やウイグル人などの少数民族の民族浄化だけでなく、臓器移植、国境を超えた臓器販売、渡航移植、臓器売買の仲介がもたらす巨額な利益も関与しています。このため、生体臓器収奪の阻止と撲滅のためには、国際および国家レベルで同時に取り組む必要があります。

UDCPFOHは、国家レベルでは、すべての政府が、国内法に基づいて生体臓器収奪を厳罰化するために必要な全ての立法措置およびその他の措置をとること、司法は犯罪の効果的な捜査と起訴に着手し確実に行うべきであると論説しています。各国政府の行政制度は、生体臓器収奪に直接的・間接的に関与していることが判明した者の入国を禁止し、自国の医療関係者が中国人医師や医療関係者に移植手術の訓練を行わないよう促し、医療雑誌は中国での移植医療の経験についての出版を拒絶するよう促すべきです。同時に、UDCPFOHは、不正に入手された人体臓器に関連する情報の収集、分析、交換、および生体臓器収奪に関連する不正行為の調査で国際的に協力することを強調しています。

また、同文書は、各国から国際社会に至るまで、国内の立法・行政・司法制度を総動員して、生体臓器収奪を阻止・撲滅すべきとしています。

虐な生体臓器収奪における最大の犠牲者グループ

長年にわたる国際機関、人権団体、各国政府の調査報告や専門家の分析では、臓器収奪の最大の被害者は、中国で迫害されている法輪功学習者であると結論づけています。彼らは、中共による弾圧政策下で、臓器の主要な供給源となっているのです。2019年にロンドンで開かれた「中国(臓器収奪)民衆法廷」も、臓器のために監禁者を殺害する行為はいまだに続いており、その主な犠牲者は拘束された法輪功学習者であり、法輪功とウイグル人への行為が人道に対する罪であることは合理的な疑いを超えて証明される、という同様の結論に至っています。

国際社会は、臓器収奪に対抗するために、被害者グループが大規模な臓器源になることを阻止する行動をとり、中共が巨額の営利目的で収奪臓器を販売することを防がなければなりません。

UDCPFOHの第8条には、以下のようにあります。

すべての政府は、中共に対し、法輪功学習者およびその他の良心の囚人に対する弾圧、投獄、虐待を中止すること、すべての囚人に対する強制的な臓器摘出を中止すること、強制的な臓器摘出の罪について自由で独立した国際的な調査のために、すべての拘置 所および収容所を開放することを促すものとする。

全ての政府は、中共が国家権力として生体臓器収奪に参与していることを可能な限り強く非難し、その蛮行を止めるべきです。必ず行うべきことです。

結論と提言

21世紀において、一般市民からの生体臓器収奪が国家権力(中共)によって推進され、中国全土で長年に渡り実行されてきたことは、口にするのも苦しいことです。前例のない邪悪な人権侵害と見なされる、このような蛮行が十年以上も続いていることは、実におぞましいことです。UDCPFOHは、人間の尊厳、生命、基本的権利など、かけがえのない権利を守るための人々の宣言、姿勢であるとともに、国際社会のさまざまな分野の力を総合して、生体臓器収奪を阻止し撲滅するための重要な出発点でもあります。この点からも、私たちは全世界の政府に対して、生体臓器収奪の犯罪化を包括的に推進するよう呼びかけています。

生体臓器収奪犯罪の種類は、信仰グループや少数民族を抹殺するために行われる場合、移植臓器として売られる場合、人体実験や標本に用いられる場合など様々です。生体臓器収奪の加害者は、犯罪に参与する意図や反抗手段が様々であるため、既存の協定や法律では包括的に犯罪行為を罰することができません。

現行の国際的な司法体系と、実際の緊急性に対処できないことを考慮すると、全ての政府がこの残忍な臓器収奪犯罪に対し、その要素と刑事責任を、国家レベルでより完全に包括的に立法化し、「生体臓器収奪防止のための普遍法」を策定する必要があります。最終的には、生体臓器収奪と闘い撲滅する世界的な擁護ネットワークが構築されることでしょう。この歴史的瞬間に、人々は前例のない残虐行為を直視し、人類の歴史におけるこの重大な章を記録するため正義と良心を守らなくてはなりません。

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4. Kim Song, Judge

金松(キム・ソン)判事

韓国:ソウル行政裁判所 裁判官

韓国の裁判官で構成される国際人権法共同体メンバー。2019年に東京大学で開催された「臓器濫用及び移植ツーリズムについて考える」アジアのシンポジウム」で「韓国の臓器移植法について:概説、事例、イスタンブール宣言に準拠した改正の提案」と題する研究発表を行った。この研究で金松(キム・ソン)判事は、中国での臓器売買において、移植を受けるレシピエントが韓国人である犯罪事例をすべて分析し、共通する通常ではないパターンを発見した。非常に短い待機期間、疑わしい臓器源、需要に応じた臓器の供給(付着しない場合は別の臓器を移植し失敗がないようにする)など、共通する通常ではないパターンを発見した。

【日本語訳】

意義あるこの世界サミットにお招きいただきありがとうございます。

私はここでは、中国における臓器収奪に対抗し阻止するための対策として、グローバル・マグニツキー人権問責法(GMS)(邦訳では以下「マグニツキー法」と略称)を提案したいと思います。

今日、私たちは、中華人民共和国及び中国共産党が20年以上にわたって無実の市民から臓器を収奪しているという事実に向き合わなければなりません。人道に対する犯罪であることは誰も否定できません。

私たちはこの事実を直視するために、かなりの時間を費やしました。判事として、(2019年にロンドンで開かれた)「中国(臓器収奪)民衆法廷」が、実際に起こっているのかを問う議論に終止符を打ったと考えています。今、この悲劇を終わらせるために私たちの知識を結集させる必要があります。

では、どのように立ち向かえば良いのでしょうか。一個人の犯行ではなく、“単一主権国家”による組織的な大虐殺です。しかも、この国家は人権理事会ならびに国連安全保障理事会の理事国です。国連がこの犯行に対する効果的な措置を講じるのには、さらに20年を要するかもしれません。今日の国際政治において、様々な利権や理念が絡みあう193の加盟国が協調して決断を下すことは容易ではありません。

この状況において、個々の国家が自発的に制裁措置を取ることは、一つの選択肢になり得ます。私は、米国、カナダ、EU、英国が近年採択したマグニツキー法が良い例だと考えています。

米国では、マグニツキー法が2016年に制定されました。同法はグローバルに適用され、世界のあらゆる地域での人権侵害に関与した国外の個人に対して、資産凍結や入国禁止という制裁措置を米国政府が取る権限を与えるものです。

同法は、2020年7月、米国政府が、ウイグル人に対する人権侵害を理由に、新疆ウイグル自治区の中国政府機関や政府幹部に制裁を加えたことは、心強いことです。このことは、(他の国々が)中国政府当局や政府幹部を対象とした同様の制裁の可能性を広げました。

そして、注目すべきは、マグニツキー法を採択した国々が協力体制を形成しつつあるということです。

今年3月には、米国、EU、カナダ、英国は、新疆ウイグル自治区での人権侵害を理由に、中国政府幹部に対する協調制裁を発動しました。

こうした協力は相乗効果をもたらします。米国務省は、世界の同盟国と共に、中国の犯罪行為の即刻停止と犠牲者のための正義を求め続けるという声明を発表しました。

そしてようやく、米連邦議会はマグニツキー法を臓器収奪に関与する者に課す方向に進んでいます。2016年、米国下院は、中国に臓器収奪犯罪の停止を求める「決議案343号」を満場一致で可決しました。そして、今年(2021年)3月、5人の米国議員が、資産凍結、入国禁止の措置を含む超党派の法案「Stop Forced Organ Harvesting Act of 2021(臓器収奪停止法案2021)」を提出しました。

他の制裁と比べてマグニツキー法の法的な側面でのメリットは何でしょうか?

1. 第一のメリットは、各主権国が国内レベルで判断して制定・実施されるため、外国人犯罪者に対する制裁を迅速かつタイムリーに行うことができます。

2. 第二に、犯罪国家そのものを直接対象とするのではなく、犯罪者だけを対象とするため、「主権侵害」の心配が比較的少ないことです。西側諸国が中国や香港の人権問題を提起すると、中国はその批判に対して「内政干渉だ」と常に反撃します。しかし、個人に対する制裁であれば、中共が発する虚言を回避できます。

3. 第三に、刑事裁判所による罪状ほど厳密でない証拠でも、入国禁止と資産凍結は正当化されうるということです。さらに、出入国管理については、各国が広範な自由裁量権を有しています。

4. 最後に、「スマートな制裁」の一形態として、犯罪に関与していない弱者に意図しない悪影響を与えてしまうことが避けられます。

要約すると、マグニツキー法は、現時点で、中国での臓器収奪に対する利用可能で便利な措置です。

では、このような制裁は、悪意のある行為者を抑制し、人権侵害に対する説明責任を促進することができるのでしょうか。私の答えは、「その通り」です。

まず、ロシアに特化した米国のマグニツキー法の原型は、ロシア政府に対する静かな脅威となっているようです。多くのロシア政府高官が西側に財産を移していることが知られているからです。

これは中国に対しても同じです。中国国内の激しい権力闘争のため、中国政府高官は本土からの脱出に強く駆り立てられています。2017年にメディアは、中国のトップレベルの政府高官のうち85%が亡命の準備をしていると報じています。1995年から2008年の間に、1万8000人以上の高官が国を離れ1450億ドルの資産を持ち出しています。2014年の数字では、推定120万人の中国政府高官が、家族を国外に定住させています。

したがって、国外資産の凍結と諸外国への入国禁止措置は、彼らにとって大きな脅威となりえます。つまり、臓器収奪のような人権侵害への関与が、彼らの将来にとって大きなリスクとなりうるのです。ですから、マグニツキー法は臓器収奪犯罪に関与する前に、思いとどまらせる効果があるのです。外部の人々が彼らを目覚めさせ、警告することで、彼らが考えを改める可能性が十分にあります。

では、私たちには行動を起こす義務があるのでしょうか。私の答えは「イエス」です。

その義務は、世界人権宣言から派生するものです。

しかし、それだけではありません。私たちは自分たちの過ちを正す義務があります。中国の外の人々も、数年にわたって直接または間接的に、臓器収奪産業に関与してきたからです。

数十年以上にわたり、中国からの臓器の買い手は外国人でした。2000年代初頭には、韓国人の患者が臓器を求めて中国に押し寄せ、臓器収奪産業の重要な顧客となりました。衝撃的で説得力のある報告書『血まみれの臓器狩り(Bloody Harvest)』が2006年に出版され、イスラエルは自国民の中国への渡航移植を直ちに禁止しましたが、多くの国々では違法な「移植ツーリズム」は放置されてきました。

「中国(臓器収奪)民衆法廷」が適切に指摘したように、中国と実質的に交流する者は、犯罪国家と交流しています。しかし、真実を直視する勇気のある人はほとんどいませんでした。移植学会の医師でさえ、数名の例外を除いて、中国で溢れる臓器の出どころに何の疑問も持たずに中国側に立っていました。

より根本的には、中国共産党の目に余る人権侵害を放置してきたことには、世界の国々に責任があります。私たちは、1989年の天安門事件、1999年からの法輪功学習者への残忍な迫害、そしてウイグル人やチベット人などの少数民族への冷酷な弾圧を目の当たりにしました。しかし、私たちはこの全体主義国家を素直に受け入れ、国際社会における良きパートナーとして政権を信頼していました。

一方、中国共産党はその向こう見ずな人権侵害の手を緩めることはなく、その範囲を香港へと広げていきました。そして、西側からの膨大な資本流入もあり、一帯一路プロジェクトを通じて世界覇権を目論む強大な怪物へと成長を遂げました。

さらに悪いことに、私たちは、意図的または無意識に、迫害の被害者を悪魔化する中共のプロパガンダを広めています。例えば、韓国では、キリスト信仰の名の下に、中国国内の法輪功や少数派の宗教を中傷し、中国からの宗教難民をキリスト教の名の下で拒絶する団体があります。その団体のリーダーは中共との親密な関係にあることで知られています。

したがって、中国における臓器収奪に反対する行動は、任意の慈善的な活動ではなく、私たちの義務を果たすために欠かせない活動です。

マグニツキー法は前向きな最初のステップになり得ます。私たちはすでに臓器収奪を担当する中国トップレベルの政府高官の詳細なプロフィールを手にしています。

そして、マグニツキー法を支持する諸国間の協力の拡大が、この取組みをより効果的かつ強力なものにすることでしょう。

また、マグニツキー法の有効性と信頼性を確保することが重要です。このような制裁の信頼性は、国家権力の重大な乱用がいつどこで起こっても、恐れや仲間意識を抜きにして制裁を適用する我々の確固たる意志が実に重要です。

しかし同時に、マグニツキー法が協調的な国際刑事司法に代わるものではないことも念頭に置くべきです。マグニツキー法は今私たちができる最小限の措置であり、その先には長い道のりがあるのです。

とはいえ、マグニツキー法を起点とすることで、人間の尊厳への方向性を修正する機会がえられます。

2021年の現在、私たちは人類史上で最も残忍な犯罪国家と共に生きていると言えましょう。そして、私たちは様々な形でその犯罪国家と深く関わっています。利益や利害に目がくらみ、犯罪の抑止を無視するか、真摯に取り組まなければ、現代の人類の恥となることでしょう。次世代は私たちのことを、ナチスのユダヤ人に対するホロコーストを無視した人たちよりもさらにひどい、愚かで無知、貪欲、臆病、冷淡なp先祖として記憶することでしょう。

しかし、香港で起こったことや壊滅的なパンデミックを経て、人々は目覚めつつあります。「生体臓器収奪の阻止と撲滅に関する世界宣言」を中心に、世界の人々が立ち上がり、自国の政府にこの残虐行為を停止する行動を求めることを願っています。

ご静聴、ありがとうございました。

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