第4回 生体臓器収奪犯罪に関するメディアの沈黙と自己検閲

世界サミットの第4回目では、ジャーナリズムの重要な側面である報道の自由、検閲、情報抑圧を取り上げます。情報の伝達を担うジャーナリズムは、自由な社会において重要な存在です。人々は真実の情報として受け止め、情報に基づいた意思決定をするためにジャーナリズムに依存しています。中国の生体臓器収奪を主流メディアが報道してこなかったことは大きな損失でした。この「人道に対する罪」に関する情報・知識が国民に広まらず、この人権侵害に関する調査や研究の信頼性に悪影響を及ぼしてきました。
2021年9月24日
1. Marco Respinti

マルコ・レスピンティ

イタリア:ジャーナリスト、随筆家、翻訳者、講師。

国際ジャーナリスト連盟(IFJ)会員。幅広く出版しており、イタリア内外の雑誌やジャーナルに寄稿している。「信教の自由のためのヨーロッパ連盟」( European Federation for Freedom of Belief)の諮問委員会のメンバー。学術出版物「The Journal of CESNUR」と、宗教の自由と人権の問題に関する国際的なオンライン紙「Bitter Winter」の担当取締役を務めている。

【日本語訳】

11世紀、ヨーロッパの大草原の民や文化を通じて、「キャセイ」という地名は、ある人にとっては蔑称であり、ある人にとっては文化的な識別語でした。現在私たちが「中国」と呼んでいる国を漠然と示すものとして伝わっていました。現代使われている意味とは別に、驚嘆と神秘を呼び起こしてきました。現在でも中国は広大で神秘的な土地です。多くの物が存在し、多くのタブーが存在しています。その一部を後紹介しましょう。

年間の死刑執行数は国家機密ですが、アムネスティ・インターナショナルは数千人単位で数値を推定しています。

新疆ウイグル自治区(非漢民族は東トルキスタンと呼ぶ)でのウイグル人および他のトゥルク系住民、主にイスラム教徒を対象とする大量虐殺は、現在起こっている惨事です。最近、英国ロンドンで行われた「ウイグル法廷」がその証拠を収集しましたが、それでもいまだに否定している人が少なからず存在します。

チベット仏教徒と内モンゴル自治区のモンゴル人が、ゆっくりと入念に文化的虐殺を行ったことは、恐ろしい事実ですが、(国際社会にとって)不都合なので認められていません。

中国政権は、「一人っ子政策」を中止したと主張しています。中華人民共和国の人口の数を多かれ少なかれ「大躍進」(1958-1961)の愚行に逆戻りさせた政策でした。最近の「自由化」で2015年に1夫婦につき子供2人、2021年5月31日から子供3人となり、将来はもっと増えると主張しています。事実上、典型的な人口動態の全体主義化と言えましょう。

高度な顔認識ソフト、最先端のデータ蓄積、指紋採取装置、DNAプロファイリングなど、あらゆる先端技術を駆使して毛細血管のように張り巡らされた大衆監視システムが国民を圧迫しています。

このことは、すべての市民に対して文字通り耐え難い統制を生み出し、全世界に深刻な脅威をもたらしています。これらのあらゆる証拠を前にしても、多くの人々は、フェイクニュースや西側のプロパガンダとみなし、中国政権の巧みな話術に乗せられ、批判することなく政権の言葉を繰り返しています。

すべての宗教、精神修養法は、支配者である中国共産党の物質至上主義の理念のもとでは、不自然と見なされ、組織的に絶滅に追いやられ、迫害、弾圧、不法監禁、心理的・身体的拷問、屈辱、死を通して教徒の消滅に追い込まれています。しかし、1982年の中国憲法では、国民に信教の自由を認めています。ただし、「正常な」宗教しか認めないとも記載されています。

そして重要な問題である、おぞましい生体臓器収奪があります。いわゆる「良心の囚人」が対象です。時には生きている状態で臓器が収奪されます。国家が公の場で鳩を演じながら地下ではハゲタカとなり、その臓器を巨大な闇市場の交換部品として用います。中国は、国際シンポジウムでこの極悪非道な行為に反対する証言をするために、閣僚や高官を送り込むことさえあります。あたかも政府が全く関わっていないかのように。

中国という地でのタブーは千に及びます。生体臓器収奪は、何十年もの間、罪のない人々を殺戮してきました。最近、英国ロンドンで行われた「中国(臓器収奪)民衆法廷」などで膨大な証拠が集められたにもかかわらず、この事実に怒り、警告する人々、もしくは単に認識している人々は世界でも非常に少ないようです。生体臓器収奪は、主に法輪功(法輪大法)学習者を虐殺し、中国での学習者の数を大幅に減らしましたが、種々の報告書にはウイグル人、チベット人、全能神教会のメンバーなどの犠牲者も記録されています。

エミリオ・サルガリ(1892-1911)は、イタリア人で、人気のある冒険小説の作家です。異国風のシナリオで、よくアジアを舞台に取り上げています。彼が「グイド・アルティエリ大尉」というペンネームで1901年に発表した『Le Stragi Della China(中国の虐殺)』という小説があります。現代のイタリア語ではCinaですが、この本では当時の一般的な綴りChinaを使っています。当時の中国とは異なる架空の作品ですが、このタイトルは、現代の陰惨な中国を表現する上で、まさにうってつけの響きを持っています。

千のタブーを持つ中国(別名「屠殺者」)には、無実の人々を殺害する側面があります。この「人道に対する罪」が暴露された場合、中国共産党は、捏造された一連のフェイクニュースであると応えます。現実を歪め、一般人の認識を変え、受け入れやすい標準的なシナリオを押し付けます。こうすることで悪事を隠蔽し、平然と実行し続けます。

この戦略で注目すべき点は、中国共産党のプロパガンダは、繕った答えで事実を論破するふりをするだけには留まらないということです。繕った回答は現実を深く捻じ曲げて「post-truth(ポスト真実)」(訳注:虚偽であっても感情に訴えるもの)を確立してしまい、中国共産党が取っている厳しい措置の正当化、さらには「救済の役割」を国内外に伝播するために利用されていきます。言うまでもなく、このような公式のシナリオが定着してしまうと、反体制派は二重の罪を負うことになります。真実を語ることの罪と、「ポスト真実」に背くことの罪です。

このことは少数民族の場合、露骨に示されています。少数民族であるというだけで「分離主義者」や「テロリスト」であるという根も葉もない言いがかりで迫害されています。宗教団体や精神修養の団体の場合、中国共産党の物質至上主義の信条が彼らの存在、ましてや数の増加を受け入れることができないために、「社会の安定」を阻害するものとして嫌がらせを受けています。

無実の人々を殺害する中国共産党は、通常2段階にわけて、フェイクニュースやポスト真実を工作しています。まず、中国共産党は何が何でも現実を否定し、あえて発言する者に 「嘘つき」のレッテルを貼りつけます。そして隠蔽が不可能となった時点で、公的証拠としての数と質を用いて「合理的な理由」を見つけます。

このことを示す、二つの事例をご紹介しましょう。

最初の事例は、新疆ウイグル自治区/東トルキスタンにおける「過激派」の再教育を目的とした収容所です。中国政府は収容所の存在そのものを否定し始め、かなり以前に公式に廃止されたとしています。実際には、3種類の「再教育収容所」のうち廃止されたのは、2013年に廃止された「労働教養所」(司法による裁決を不要とする労働による再教育)の1種類だけです。中国の刑務所制度の一部である労働改造所(受刑者は刑事裁判を経て裁判所から送られる)、そして教育転化(教育を通して転向させる)制度の2種類がいまだに存在しています。中国当局は、後者が写真で世界に公開されるまで、実に長い間「忘れて」いました。公開された時点で、中国共産党はレトリック(表現)を変え、その存在を認め、「宗教狂信者」と「民族主義者」が自らの後進性と過激な発想を捨てることを学んで卒業する「職業学校」であると説明しました。

二つ目の事例は法輪大法です。中国で1992年に伝え出されたこの動きは、当初、中国共産党国家の支持を受け、気功の伝統に根ざした典型的な動作が健康的だとみなされていました。しかし、法輪功学習者の数が急速に増え、中国共産党はその精神性を否定することができなくなりました。そして迫害が始まり、「邪教」とされました。中国の公式書類で「evil cult」と誤訳されましたが、じっさいは「よこしまな教え」という意味で、中世期から政府が承認しない教えであるという意味で使われ、明王朝では邪教のリストが作られました。1995年に中国共産党が政治的な武器として復活させたのです。中国では、法輪大法のように「邪教」のレッテルを貼られたグループは、犯罪者であり、容赦なく迫害すべき対象となります。

無実の人々の殺害のもう一つの側面として、知識の抹殺が挙げられます。

中国共産党のプロパガンダ・メガニズムは、誤報と偽情報に依存しています。自分の主人の声を表面的に繰り返すだけのメディアを通して、知識の抹殺という目標が達成されます。達成されることが多いです。メディアが共謀する場合、個々の理由により主観的であったり客観的であったりします。イデオロギーに賛同して、中国共産党と提携して犯罪を犯しているジャーナリストもいます。中共からの公式のシナリオに疑問を抱かない方がラクだから、ただ繰り返すだけのジャーナリストもいます。

今さらながら、共産中国に思想的に賛同する者がいるということが不思議に聞こえるかもしれません。しかし、党の正統性の名の下に、証拠を否定するいわゆる「同胞」は存在します。

中国と客観的な形で共謀する者、つまり単に無関心でトラブルを望まない人たちは、ジャーナリズムにとって恥辱的な存在です。

千のタブーの国について、タブーに疑問を持たずに報道することは、タブーを受け入れたジャーナリズムです。その様なジャーナリズムは、単に「劣悪な」ジャーナリズムとしか言いようがありません。

元・中国駐在のカナダ大使(2009-2012)デービッド・マルロニー氏は「外交とはお世辞を言うことだと思われているが、実際は必ずしもそうではない」と語りました。ジャーナリズムとは「今記事を出すか腐らせるか」だけだと思われていますが、そうではないはずです。良いジャーナリズム、すなわちタブーのないジャーナリズムの場合、真実のみを掲載し、できるだけ多くの証拠を示し、透明性のある形で意見を述べ、読者を欺かないことが必須です。言うまでもなく、道徳的な義務にはとどまりません。ジャーナリストは、嘘を発表したりタブーの前にひざまずくくらいなら自分の記事を「握り潰したほうがいい」という覚悟が必要だということも意味しています。

倫理性を論じる以前に、タブー・ジャーナリズムは劣悪なジャーナリズムです。部分的であり、目的の半分も達成していません。

ジャーナリズムとは民主主義の番犬であり、よりよい社会のために絶えず奉仕する、とよく言われています。特に、フェイクニュースや暴力が日常茶飯事の全体主義国家に対する調査ジャーナリズムの心構えとして、さらに適切な言葉です。

ジャーナリストとナチス幹部、ジャーナリストと医師という矛盾した類似性を2つ紹介することで、この基本的な点を明らかにさせてください。

1945年から46年にかけてのドイツのニュルンベルク裁判では、多くの国家社会主義者たちが、大量虐殺や人道に対する罪への加担に対する非難から自分たちを守るために、自分は命令に従っただけだと主張しました。ここで、メディアの矛盾が指摘できます。情報源や主張を問うことなく、記事を書くだけでいいのでしょうか?たしかに、ジャーナリストをドイツの第三帝国の官僚と比較することは、あまりにも突飛でけしからぬことのように思えるかもしれません。しかし、多くの場合、今日の中国に関する誤った報道や中国共産党の嘘を繰り返すことで、結局、罪のない人々への嫌がらせや拷問、死を促していることを考え合わせれば、別に突飛なことではありません。

2つ目の矛盾した類似性として、違法な人体臓器移植に関与した医師たちのケースを見てみましょう。疑問をもたずに手術すればいいのでしょうか?

ここで、名優デンゼル・ワシントン主演の2002年ハリウッド映画『ジョンQ―最後の決断』を引用させてください。幼いマイクに緊急の心臓移植が必要となりましたが、両親のクインシー・アーチボルドと妻のデニースには資金がなく、保険会社のごまかしも発覚します。ジョンは息子の命を救うために、できる限りのことをしようと懸命に努力しますが、すべてが無駄であることがわかり、末期状態の息子が横たわる病院の救急治療室で、数人の患者やスタッフを人質に取ります。正直なところ、この男性は人を傷つけたことなど一度もない善人です。しかし、切実な思いに追い詰められ、極端な行動に出ます。心臓専門医のレイモンド・ターナー医師に電話し、マイケルに心臓を提供するためなら自殺してもいいと宣言します。ターナー医師はその考えを重く受け止め、「私は医師に過ぎない」とコメントし、最終的に受け入れます。彼の仕事は命を救うための移植手術であって、たまたま扱った臓器の出所を問うことではないのです。幸いなことに、この映画は流血を伴うことなく幕を閉じることができました。ハリウッドの定石のハッピーエンドで終わります。しかし、現状を振り返り、疑問を抱くには絶好の機会を与えてくれる映画でした。

幼いマイクの胸に挿入しようとする心臓が不正な出所(ジョンの自殺)であることを知りながら無視するという極限状態でも、ターナー博士は疑問を抱かずに手術することができるのでしょうか。もちろん道徳的にはできません。

同じように、ジャーナリストは、中国での臓器移植について、すべての臓器が自発的提供の結果であるという公式のシナリオを鵜呑みにすることはできません。数が合わないことが報告されているのです。人間のすることとは思えない不穏な事実を発覚する危険を冒してでも、千のタブーの国に疑問を投げかけることが、優れたジャーナリズムです。

臓器移植について議論するのは容易なことではありません。繊細な問題で、感情に触れることであり、身内が直接関わることでもあります。私の問いかけは冷淡に映るかもしれません。患者と家族の多大な苦しみ、生と死の問題だけでなく、深刻な経済問題にも及びます。しかし、医師は、手に入れた臓器を質問することなく手術に使うことができるのでしょうか。自分が扱っている臓器が、罪のない人の命、何千何万人の命を犠牲にしているのではないかと、医師が考えることはないのでしょうか?

ジャーナリストは刑事でもなければ、宗教の説教者でもありません。きちんと仕事をしてくれればそれで十分です。しかし、ジャーナリストという職業には、常に調査の側面、倫理的な側面が存在します。ジャーナリストは刑事ではありませんが、仕事を通じてある程度の調査を行うことができます。ジャーナリストは刑事ではありませんが、刑事が多少利用するような事実を提供することができます。ジャーナリストは精神性の指導者ではありませんが、適切に仕事をすることで、人々の魂に多少なりとも栄養を与えるような機会や手がかりを提供することもできます。説教臭いジャーナリストになることは避けましょう。しかし、優れたジャーナリストは、少なくとも自分と読者の魂を毒することだけはしません。

私が言いたいことは、多くの証言、統計、調査、事実を前に、中国共産党による人体臓器移植の需要と供給のシナリオを受け入れることは、不十分であるということです。そして、特にジャーナリストは、常に情報源、データ、数値、名称に疑問を抱くべきです。

最後に、1729年にジョナサン・スウィフト司祭(1667-1745)(訳注:ガリバー旅行記の著者)が構築した、ほとんど知られていない概念で結び、同時にささやかな提案をさせてください。メディアの誠実さに挑む臓器収奪問題を、個人的で系統的に対応するには、自由で独立した環境で仕事をするジャーナリストの義務的、倫理的な注意深さ求められます。この「独立性」こそが、全体主義的権力の横暴に対抗する唯一の砦です。しかし、この概念は、真実で貴重であるにもかかわらず、おみくじクッキーのメッセージのように軽く捉えられてしまっています。フランスの哲学者、アンリ・ベルクソン(1859-1941)の表現を借りれば、「精神の補完」が必要な時なのかもしれません。

プロの善意あるジャーナリストたちが、同僚のジャーナリスト、刑事、宗教家たちのために、生体臓器収奪に関する報告、ニュース、耳にしたことを満載したオンラインの資料バンクを設立・管理し、その信憑性や中国共産党の公式対応について公に真剣に議論し、疑問を呈してはいかがでしょうか。千のタブーの国に直接挑戦し、「中国での虐殺」を止めるために貢献するという、控えめながら展望の広がる提案です。

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2. Chang Chin-Hwa, PhD

張晋華PhD

台湾:国立台湾大学 新聞研究所 教授

高く評価されている学者。受賞歴のある教師。中国コミュニケーション協会(CCS)の前理事。

【日本語訳】

人道に反する犯罪とメディアの役割

ジャーナリズムの教授として、また 21 年間の法輪功学習者として、このフォーラムでは、中共による臓器収奪に関するメディア報道とその問題点、その是正方法について論じたいと思います。一例として、2019 年の「中国(臓器収奪)民衆法廷」の調査結果に関する報道を見てみましょう。

強制的に生きたままの人間から臓器を摘出することは、臓器売買の一形態です。この問題 は 2006 年以降、法輪功学習者や人権専門家が繰り返し報告してきました。これらの報告によると、かなりの数の中国の「良心の囚人」が、臓器を目的 として殺害されてきました。このようにして摘出された臓器のレシピエント(つまり臓器の買い手)は、中国市民、または中国に渡航し多額の費用を払って臓器を購入する海外からの「移植ツーリスト」です。中国側つまり中国共産党(中共)は、これらの報告や申し立てを否定し続けています。

2018年、「中国(臓器収奪)民衆法廷」が、国際的な非営利団体である「中国での臓器移植濫用停止ETAC国際 ネットワーク」の委託により発足しました。ジェフリー・ナイス卿を議長とする、弁護士や医師などの専門家から構成された 7 人の独立した判事団が判定を下すものでした。ジェフリー卿は、旧ユーゴスラビア国際戦犯法廷で元セルビア大統領スロボダン・ミロシェヴィッチの起訴を率いたことで知られています。法廷は 12ヶ月間にわたり、50 人以上の事実証言者、専門家、調査者などからの聴取も含めた、徹底的な調査を行いました。公聴会は全5 日にわたりました。

2019 年 6 月 17 日、同民衆法廷は以下の裁定を下しました。「臓器収奪は…法輪功学習者がおそらく主な臓器源である。…臓器収奪は今日も続けられていると結論する」。裁定ではさらに、ウイグル人、チベット仏教徒、中国家庭教会のキリスト教徒もこの臓器収奪の対象である可能性を指摘しています。メディアの注目に値する大きな人権問題です。

台湾は中国と密接なビジネス関係にあり、中共の脅威を最も強く受けてきました。台湾のメディアは「中国(臓器収奪)民衆法廷」の裁定をどのように伝えたの でしょうか。調査の結果、「民衆法廷」の裁定に関する報道は1本だけでした。

単に数が少ないというだけではなく、重要な事実が誤って報道されているのです。例えば、この報道の見出しは「嘘を暴く! 英国の公聴会、中国での死刑囚からの生体臓器収奪の継続を証明」です。

ニュースの内容自体はおおむね正しいのですが、この短い見出しには、少なくとも 3点、問題があります。

第一の問題点:これは単なる「英国の公聴会」ではありません。認知度の高い国際的な民衆法廷による最終裁決です。この見出しからはこの出来事の真の重要性が汲み取れません。

第二に、実は中国は決して「処刑された囚人」をターゲットにしているわけではありません。前に述べたように、生体臓器収奪の犠牲者はほとんどが宗教的な良心の囚人であり、法輪功のメンバーが主なターゲットであることを法廷は明らかにしました。つまり、この見出しは、中共の主張に沿ったものです。無実の人からの生体臓器収奪犯罪を隠すために、中共の幹部は常に、臓器収奪の対象は死刑囚のみだったが、これは停止され、現在は臓器移植の国際ルールに基づいて規制されているとしてきました。法廷は、この中共の主張を裏付ける証拠の提示ができなかったと明確に否定したのです。

第三に、見出しには 「(中共の)嘘を暴く」ものだとあります。中共の嘘には疑いの余地がありません。これまで、記者や調査員が多くの嘘を暴露してきました。本当に重要なのは、法廷の調査結果 が、20 年以上にわたって何千人もの良心の囚人を死に至らしめた深刻な人権侵害の申し立てに対し、しっかりとした法的な結論を導き出したことです。つまり、このニュースの見出しは、裁定を単に「嘘を暴く!」と表現することで、犯罪の重大性を著しく過小評価し、法廷の信頼性を軽んじてしまいました。

また、法廷の裁定に関しての報道は、米国の主要メディアも満足な報道とはかけ離れていることを指摘しておきたいと思います。驚くべきことに、主要新聞での報道はほとんどないようです。法廷の調査結果に関する報道の欠如は、単なる時折見られる不注意ではありません。他の例を見る と、実はこれが意図的なものである可能性が見えてきます。それでは、国連の12 名の人権専門家が声明を出したケースを見てみましょう。

2021 年 6 月、国連の人権専門家 12 人が、中国で拘束されている法輪功学習者を含む少数派を標的にした臓器収奪に関する報告を「極めて憂慮する」という声明を国連のウェブサイトで発表しました。ここでも、台湾の主要メディアによる報道はほとんどありませんでした。唯一、台湾の中央通信社である CNA の報道がありました。しかしその報道では、国連の声明に1 行付け加えられていました。

CNA の見出しはこうです。「中国の少数派対象の臓器収奪―ショックを受ける国連の人権専門家。北京は猛烈に拒絶」。「北京は猛烈に拒絶」とはどういう意味でしょうか。一見、この見出しは双方の主張をバランスよく報道しているようです。しかし、国連 12 人の人権専門家の発言を、議論の余地があり、確かな証拠がないように見せているのですから、誤解を招くバランスです。先述のように「中国(臓器収奪)民衆法廷」で、中国の臓器収奪の存在と違法性は確定されています。水掛け論ではありません。犯罪は証明されました。CNA の報道は、民衆法廷の裁定には一切触れずに、中共の虚言を繰り返しているため、 中共の臓器収奪がまだ確証のない疑惑であると読者に誤解させてしまいました。このように「二つの側面」を示すことで真実が隠され、中共が多くの罪のない人々を殺害し続けることを許してしまっています。

悲しいことに、中共の臓器収奪犯罪に関するメディアの偏向報道・問題がある報道は数多く、上記はそのわずか2例に過ぎません。

次に「なぜ?」を見ていきます。臓器収奪報道は、なぜこれほどまでに満足のいくものではないのか。無関心なのか、無知なのか、それとも何か他の理由があるのか。

まず、問題は記者やメディアの側だけにあるのではありません。多くの中国の専門家や学者によると、中共は、いわゆる「シャープパワー」(訳注:情報の操作・管理を通して他国の世論を操作しようとする政策)モデルで全世界を支配しようと企ててきました。基本的には、お金、あるいは中国の巨大市場で惹き寄せ、権力や支配力を手にいれるモデルです。このモデルは、メディアだけでなく、ビジネス、テクノロジー、エンターテインメント産業、出版、学術など、あらゆる分野で国際的に成功しています。そのため、中国市場と関係のあるすべてのメディア企業は、利益の維持あるいは増加を求めているため、中共の権威主義的な支配にさらされている可能性があります。

中共による国内外におけるメディアとニュースの支配を長年にわたって体系的に研究してきた、屈指の中国政治経済アナリスト陳聯浩(チン・レン・ホ ー)氏は、2000 年以降の中共によるメディア支配の主な手法を次のようにまとめています。

第一に、国際的なプロパガンダを捏造するために、中共の「対外宣伝大計画」(大外宣計畫)のもとで、数百万ドルが投じられました。北京五輪の2008 年から始まりました。当時、経済力が飛躍的に向上する中で、1989年の学生運動弾圧という全体主義国家のイメージや、長年にわたるさまざまな弾圧活動を通して、何千人、何百万人もの自国民が殺害されたという印象を自由主義世界から払拭し、中国の価値観や言説を宣伝する必要があると中共は認識したのです。

それ以来、中共は国際的なメディアネットワークを構築し、外国人記者に多くの仕事の機会を提供し、多くの形態で国際メディアとのコネや協力体制を強化することで、自国のメディア機構を侵略的に他国に拡大してきました。具体的には、国外メディアの有力編集者や記者を中国に招聘するか各種の中国関連フォーラムに参加させ、複数のメディア交流に中国市場のさまざまなメリットを提供するなどです。

2021年の4月に発表されたジェームズタウン財団の報告書に「長年にわたり、中華人民共和国の国家宣伝機構は、「言論の力」を一層強化するための幅広い取り組みとして、国外の視聴者への影響力を拡大しようとしてきた」と記述されています。直接的な方法としては、多額の費用をかけて、影響力のある国際的な新聞や雑誌に折り込み「広報」を入れることです。この手法は最近、オンラインメディアの領域にも進出しています。ジェームズタウン財団のニュース記事では次のように解説しています。「中国の国営メディア機関は折り込み『広報』のために米国の主要新聞に資金を払ってきた長年の歴史がある。 ワシントン・ポスト、ウォール・ストリート・ジャーナル、ニューヨーク・ タイムズなどだ。多くの場合、『チャイナ・ウォッチ』や『チャイナ・フォーカス』という新華社が英紙のコンテンツに用いるタイトルが用いられている」。

米司法省は2020 年 6 月に、チャイナ・デイリー(英語版)が 2016 年 11 月以降、ウォール・ストリート・ジャーナルやワシントン・ポストなどの米国の主要メディア数社に 1100 万ドル以上を支払ってきた記述する文書を発行しています。

中共の宣伝工作「シャープパワー」を鑑みることで、中共の人権侵害に自由主義社会のメディア(主流メディア数社など)が全く関心を示さない理由、臓器収奪などの中共の人権侵害の深刻さを軽視する偏った報道の理由が理解できます。

それでは、どうやったら現状を変えられるのでしょうか?メディアは第四の機関として認識されています。メディアは権力を監視し、人々の権利を守るためのものであり、権力者を代弁して利益を得るための道具ではないはずです。しかし、中共による臓器収奪の場合、メディアは監視役としての機能を果たして いません。

他のパネリストの論点から、臓器収奪は最も悪質なものではありますが、中共による数多くの人権侵害の中の一つに過ぎないことが分かります。

したがって、これらの犯罪を抜本的に阻止するためには、中共を根絶すること、つまり全体主義的で抑圧的な共産主義政権を終わらせることが絶対必要です。この政権は、自国民を弾圧するだけでなく、「シャープパワー」により影響力と支配力を国際的に行使しようとしています。つまり、巨大な市場、経済力、デジタル・パワーの成長を背後に、その触手を他国に伸ばし宣伝工作を拡張しています。中共の人権侵害への批判や申し立てを抑え込むためのものであり、その中には間違いなく、臓器収奪問題も含まれています。

このため、メディアが中共からの独立をはかるためには、まず中共が正常な政府ではなく、犯罪国家、全体主義国家であるという認識するから始めなければなりません。

具体的には、次のような手順を踏むべきです。

まず、中共のメディア機関は、特に否定する証拠がない限り、自由で独立した存在ではなく、少なくとも中国政府の代弁者であるとみなすこと。

例えば、米国は外国代理人登録法(Foreign Agents Registration Act, FARA)に基づいて、多くの中国のメディア機関を「外国のエージェント」に指定しました。この指定により、これらの中国のメディア機関は、中国政府に代わる活動や、その活動を支援するための金銭的な収支について、定期的な公開が求められています。

これらのメディア企業は、2020 年にさらにForeign Mission(外国使節団)に指定されまし た。この指定は、米国がこれらのメディア企業を中国政府の一部門として扱っていることを示すものです。また、これらの中国メディア企業は、事務所の購入または賃借において、米国政府の承認が必要となり、国外の外交使節団と同様に、職員の雇用状況など人事異動を国務省に登録する必要があります。FARA に基づく開示の義務により、中国のメディアがどのように運営され、影響力を行使しているについて、一般の人々がよりよく理解できるようになりました。こうして、欧米メディアも、これらの中国企業から広告費を受け取る前に一息おいて考えるようになります。

第二に、伝統的なメディアやオンラインのソーシャルメディアを含む中共のプロパガンダを監視・分析するために、NGOや学者、その他の専門 家による多くの調査・研究が必要です。そうすれば、国⺠はより多くの 情報を得ることができ、中共のプロパガンダに惑わされることなく、自ら独立した判断を下すことができます。

メディアとしての倫理がより多くの会社で回復し、遵守され、エポックタイムズや NTD TV のように、中国の支配から自由なメディアが、より多くの評価と支援を得るようになることを願っています。

私たちは歴史から、深刻な人権侵害は、メディアが最高レベルの注意を払い、可能な限り早期にその犯罪を阻止できるよう、真実を明らかにするべきものだと学んできました。「過ちを繰り返さない(Never Again)」という言葉は、私たちが忘れてはならない厳粛な誓いであり、私たちは中共の犯罪を阻止するために最善を尽くすべきです。すべての自由主義世界のメディアの義務です。

過ちを二度と繰り返さないための行動が今、求められています! 

 

ご清聴ありがとうございました。

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3. Maurice Droin

モリス・ドロイン

フランス:ジャーナリスト

フランスの経済学者、ジャーナリスト。フランス軍事省と企業勤務を経て、太平洋地域に移り、商工会議所の国際関係、経済、産業開発担当のニューカレドニア代表。外務省、防衛省のもとで太平洋地域の交渉の主席コンサルタントを務めた。過去10年間は、フリーランスのジャーナリストとして活躍。

【日本語訳】

誤報を得るプレスが誤報を伝える

まず、メディアの表現の自由に関してお話しする機会を与えてくださった「生体臓器収奪の阻止・撲滅に関する国際サミット」の企画者にお礼を申し上げます。

中国の臓器収奪問題は、ご承知の通り、「人道に対する罪」であるにもかかわらず、メディアがかなりの沈黙を守っていることに気づかざるを得ません。

また、地上の人権を守る上で主たる国連、臓器移植に関わる世界保健機構(WHO)が、なぜこのスキャンダルをもっと積極的に告発しないのか、不思議に思われることでしょう。

実際、WHOは国連ほどではありませんが、報道機関の妨害によって沈黙に近い状態に追い込まれています。なぜなのでしょうか?

中国共産党に、臓器収奪を含む忌まわしい行為をやめさせたいと思われている方々のために、マスコミが情報提供をしてこなかった主な理由を3つあげます。

まず、手短に自己紹介させてください。

23歳の時、軍事大臣室で報道・情報を担当していました。

その後、大手産業グループの労働組合関係のマネジメントを担当しました。

31歳のとき、現地の上級管理職の養成を専門とする国際NGOのために太平洋地域に渡りました。ニューカレドニア、バヌアツ、パプア、フィジーなどで、当地の状況に合わせながら経済学を教えました。

その後、ロシア・シベリア、日本、インドネシア、キリバスなども含む、太平洋の中央・西部の商工会議所で国際関係を管理しました。

私は軍や外務省から、現地の大使館が解決できないような紛争に交渉役として介入するよう要請されました。解決できない原因のほとんどは、現地のやり方に関する知識に欠けていたからです。私はこのテーマで750ページの本を著しました。そして何よりも長年にわたって太平洋地域のほとんどの国家元首や大臣を個人的に知るようになりました。大使のほとんどは “énarques “(国立行政学院の卒業生)であり、大使がどこで間違いを犯し、どう解決したかを説明すると、あるフランスの首相は冗談で私に「”énarques”の修士」というあだ名をつけたほどでした。

私は中国をよく知っています。格調高い過去、道徳、拡張主義的な政策、そして中国が個人と報道の自由・民主主義・人権を全く無視することを熟知しています。中国はこの三つを欧米の主要な欠点と見なしています。

その結果、私の頭を一つの疑問がよぎります。西側諸国が中国をありのままに見るのに、まだどれほどの時間が必要なのだろうか、と言う疑問です。

一部の国は目を開き始めていますが、ほとんどの国は、習近平が2049年に発表した共産主義世界における豊かで平和で幸福な未来のために、何としても提携しなければならない素晴らしい黄金郷として中国をいまだに幻想視しています。

この牧歌的なイメージは、鄧小平が「効率と分別を持って進歩しよう」と言った時代に、中国が長年にわたって知性と忍耐をもって築き上げてきたものです。今日の習近平は、その逆で「我々が最高であることを知らしめよう」と言っています。彼は、パンデミックの1年間で中国のイメージを覆すことに成功しました。

2020年当初、中国には、非常に人口の多い貧しい大国であり、財政的・物質的に援助する必要があるというイメージがありました。COP21が財政的に援助し、フランスなどの諸国がマスクを送って物質的に援助しました。

その1年後、台湾、南シナ海の状況、オーストラリアへの爆撃の脅威、モンテネグロでの抗議活動、世界の軍事基地の「かこつけ」となるシルクロード、2049年に世界は共産主義に服従するか破壊されると繰り返す習近平の言葉から、中国は実は億万長者で、嘘つきで、利己的で、非常に攻撃的であることがわかりました。

それでは話を戻して、中国の犯罪に対してメディアが沈黙を守る原因についてお話ししたいと思います。

かつてメディアは、購読者数、広告収入に基本的に依存していました。

そして、インターネットやビッグテックのニュース、再情報サイトやブログが、文字や映像の報道機関のかなりの部分を占めるようになりました。

これら後者の媒体は、国家に頼り、年間10億ユーロの助成金を受けるようになりました。

そして、ジョージ・ソロスのオープン・ソサエティ財団やビル&メリンダ・ゲイツ財団などの億万長者、製薬業界などの大手国際産業グループが、自分たちの製品や行動を讃えてもらうためにお金を払うようになりました。

中国も、マスコミにお金を払ってプロパガンダを自分達に都合の良い方向へ強化させる利得を理解していました。アフリカでの中国モデルの宣伝がその一例です。

欧米のメディアも現実を直視しようとせずにメッセージを流布しました。中国モデルは、19世紀のヨーロッパによる植民地政策を模倣しただけのものですが、融資の方法が異なっています。

ヨーロッパは、道路、橋、鉄道、病院、学校、宿舎、港湾などを、地元の人材を利用して建設しました。炭鉱や農業を搾取することで、支出は賄われました。1960年代以降に独立運動が起きた時点で、金銭的な補償を求めることなくヨーロッパはアフリカから離れました。

中国は植民地化しないと言います。道路や橋などを建築するために借款しました。しかし、貸したお金は、中国人労働者を伴う中国企業に支払われました。ですから中国が借金を返済すべきなのです。借りた国が返済できなのなら、中国が炭鉱、農地、港湾、都市部の土地の代金などを支払うべきです。

中国人労働者がその国に残ることになるため、最終的に植民地化され、搾取されます。お金を貸したことにはなりません。中国が中国企業に直接支払っているため、現地雇用は創出されません。また、政治的なエリートを買収し、インフラ、土地、港湾を中国が所有することになり、事実上の植民地支配となります。これはバヌアツのような太平洋の小国を見れば一目瞭然です。

ですから、中国は世界のどこにあっても、自国の内政問題とするものへの批判を一切抑えることができます。臓器収奪が良い例です。

さらに、中国は記事の掲載スペースを高額で買っています。週刊の『Marianne誌』によると、中国寄りの短い記事を掲載することで、1万5000から3万ユーロ(200万円から400万円 @144円)を中国から受け取っています。

これに加えて、新聞経営者、編集者、ジャーナリストへの賄賂があります。中国が全額費用を支払う中国への渡航などの「ギフト」が使われます。

二つ目の理由はイデオロギーです。

10年以上前、著名ジャーナリスト、ジャン・フランソワ・カーンは、ジャーナリズム専門校の卒業生の80%以上が社会共産主義者であり、中国のマルクス主義の思い込みに疑問を呈するとすぐに「右翼陰謀論者」などのように侮辱し、建設的な対話ができないことに気づきました。

このことは、2020年3月、私が「中国現地の新聞を読んで得た事実と論理的推論から、COVIDは武漢P4ラボから始まったという結論を出すべきだ」という記事を発表したときに、私自身が体験しました。それから1年以上経って、武漢を調査したすべての情報機関が同じ結論に達していました。

生体臓器収奪についても同様です。「中国(臓器収奪)民衆法廷」と国連の報告が共に、写真、ビデオ、口頭・書面による証言など多くの証拠があり、中国の有罪は疑いようがないと結論づけていますが、中国は否定しています。

中国は、いわゆる “自発的ドナー”に脳死を引き起こす機械を開発したと自画自賛して、誤報を流したばかりです。これによって、生体臓器収奪という耐え難い苦痛をなくしたのかもしれません。しかし、被害者が臓器摘出に同意していない事実は変わりません。

三つ目の理由は戦略です。

中国共産党は何年にもわたり、西側メディアにプロパガンダを浸透させてきました。お金を払って記事を書かせるだけでなく、「大外宣」と呼ばれる対外戦略を展開してきました。

中華人民共和国は、中国史を塗り替えています。自分達の歴史と中国史を結びつけ、実証されている事実と、中華人民共和国の存在を強化させるための作り話とを混合しているのです。西側に与えたいイメージを損なう可能性のあるものはすべて注意深く取り除かれ、習近平が演説で美化する共産主義の「赤い遺伝子」が人類を救うというシナリオを推進します。

これらの演説から、習近平は民主主義、人権、自由の破壊を望んでいると言えるのですが、メディアはこのことを、中国国内で使われている声明であり、西側諸国でそのままを考慮すべきではない、と伝えるのです。

毛沢東が引き起こした5千万人の死を忘れるのなら、習近平が引き起こしている死も忘れることができるのでしょう。拷問がしばしば死に至っています。

この戦略には、もう一つの事実が起因しているのかもしれません。習近平は、9歳から19歳のあいだに北方の寒い砂漠の地域の農村へ下放されました。ストックホルム症候群(訳注:被害者が生存戦略として犯人との間に心理的なつながりを築くこと)にかかった彼は、父親が中共を裏切ったことで拷問され、姉が自殺する中、毛沢東語録を暗記して従い、看守を誘惑するためにあらゆる手を尽くしました。

収容所で仲間たちが、取るに足りない理由でしばしば殴られ、拷問され、時には殺されるのを見てきた彼は、党の方針に背くものは拷問と死によって必ず罰せられなければならないという観念が胸に刻まれたのでしょうか。その可能性はあります。

中国は自国のメディアを「新中国」の代弁者にするだけでは満足せず、世界中にメディアの代弁者を広げています。

すべては中国共産党の確固たる権威の下にあり、毛沢東プロパガンダを推進する使命があります。彼らは、労働改造所、千軒以上の強制収容所、農村住民と労働者の悲惨な状況、ヨーロッパに観光に来て1日1000ユーロ(14万4000円)も使った若いカップルなど極端に富裕な党員には触れません。そして何より、新鮮な人間の臓器の国際市場に関しては一切報道しません。ハラル臓器を注文すれば、ウイグル人のイスラム教徒が屠殺されます(訳注:ハラルとは、イスラム教徒が食べる特殊な方法で屠殺された肉のこと。イスラム教徒は豚肉を食べないので、豚肉を食べないイスラム系ウイグル人の臓器が「ハラル臓器」と呼ばれる)。アフリカから注文が入れば、中国の大学に通う黒人の学生が姿を消します。

左翼のメディアに加え、フランスには、中国の毛沢東のプロパガンダを流布するために金銭を受け取っている典型的な新聞が2社あります。L’Opinionと Le Figaroです。Le Figaroは理論的には右翼です。そしてL’Opinionはリベラリズムの代弁者ですので、とても狡猾な工作です。

ですから、L’Opinionに「中国モデル」で公共の自由を進歩的に抑圧することのリベラルとしての利点を賞賛する記事が掲載され、その直前に上院でも同様の報告があったことから、フランスでは中国版の共産主義のイデオロギーが深く浸透していると理解しました。

これは、「生態系の保全を通じて貧困を削減する」中国の能力をL’Opinionが称賛していることになります。中国が世界有数の汚染国であること、共産主義が貧困を削減した国はないことを忘れてはなりません。共産党員を除いて、ソ連、東欧、キューバ、ベネズエラの状況を鑑みてください。中国では、農民の平均月収は120ドル、労働者の平均月収は150ドルです。現在の国民の平均所得が868ドルであるのは、都市の中産階級の商務収入と9500万人の中国共産党員が受け取る多額の給与のおかげです。

フランスでは、AFPは中国共産党の公式プロパガンダを文書化しているに過ぎません。中国の実態を遠くから、しばしば中国の現状を誤った形で映し出しているだけです。AFPが伝えたものしか掲載しないフランスの報道機関への検閲となっています。中国の昨冬の地方飢饉、北京に近い遼寧省や安徽省、40余りの大都市についてのロックダウンには一言も触れられていません。

ジブチのような軍事基地が点在するシルクロード上の侵略的な政策に関する水増し情報だけが流されます。ジブチでは、1万人の軍隊と海軍部隊が待機し、スエズ運河をいつでも封鎖できる体制を整えています。詩人・習近平は点在する軍事基地を「真珠の糸」と呼び、中国大使を「私の戦狼」と称えています。

習近平が、必要とあれば武力で、植民地化しようとしている台湾への差し迫った脅威についても、シンガポールやマラッカ海峡への脅威についても言及されていません。マラッカ海峡は、インド洋へのアクセスの要であり、空母や原子力潜水艦が通過できます。フィリピン、ベトナム、マレーシア、インドネシアの領海に国際的に違法な形で軍事基地が作られ、戦争好きの中国が最近、占有しています。

そしてもちろん、政治犯や宗教犯、今や一般市民から同意なしに臓器が摘出されている人権侵害については何も語られていません。

中国の大臣が、収容所には囚人の労働と臓器の売却で資金を調達する法的義務があるため、こうしたことはすべて正常であると宣言すると、西側のメディアはフェイクニュースとして語ります。なぜなら、中国はマルクス主義の陣営にあり、そのような恐ろしいことをするはずがないからです。

孔子学院

孔子学院は中国の補助機関として、国外の大学の資金援助をしていることはご存じかと思います。研究所のあるところや、科学・軍事研究所の近くにだけに設置されているようです。

奇妙なことに、国外の研究所で発見があった場合、その国で特許を取得する前に中国で特許を取得しています。孔子学院が中国の諜報機関の分派であることを知らない方は驚かれるかもしれません。中国の法律では、興味深い情報を盗み出し、現地の大使館を通じて北京に発信した教師や学生に支払うボーナスの額を定めています。以来、中国は特許の登録件数で世界一になりました。

しかし、略奪とプロパガンダという、孔子学院の真の2つの目的に関するスキャンダルや暴露は、ますます増えています。トゥールーズのような大学やノルウェーのような国は、孔子学院を一切拒否しています。

しかし、このスキャンダルや暴露はマスコミが正確な情報を報道した結果ではありませんでした。孔子学院を賞賛することで中国から支払われていたボーナスがなくなるので報道を出したに過ぎません。自分が座っている枝そのものを切り落とすことは容易ではありません。

同様に、習近平が「戦狼」と呼ぶ大使たちは、国際機関で各国政府に対して、中国に有利になる投票をするようにプレッシャーをかけ、人権と国際法を中国に尊重させるための制裁を回避させようとしています。

同時に各国政府が、臓器収奪のタブーを尊重するように自国のメディアにプレッシャーをかけています。

これはかなりの問題です。医師、選出議員、政策立案者は、中国に関するメディアの幻想に騙され、ボーナスや贈り物を与えられ、中国による人権犯罪を無視するか、見て見ぬふりをすることになるからです。

情報が欠如しているわけではありません。しかし、いわゆる「主流」メディアの外で、どのように見つけるかを知る必要があります。「主流」メディアとは、AFPの極東サービス、エリゼ宮近くのサントノーレ通りに事務所を構える中国共産党の宣伝機関、新華社などを意味します。

しかし、NTD TVとエポックタイムズなど、中国共産党に従わないメディアも存在します。フランス語で発行されており、無料です。

どこにいてもメディア検閲がある

中国でのメディア検閲は通常のことです。中国共産党が検証する言論のみが許可されるからです。しかし、民主主義を自称するフランスのような国で、公共の建物の上部に「自由」という言葉が刻み込まれているような国で、メディア検閲を行うことは通常でしょうか?

もちろん 通常ではありません。

しかし、Facebook, Google, Youtube, Twitterから小さな地方新聞まで、すべてのメディアは多かれ少なかれ検閲されています。真実を語る者を侮辱し、名誉を汚すなどの嫌がらせは通常のことです。

AFPが最近、国連の調査社が臓器収奪の現実を報告した際、このことは実証されました。全体主義の共産党が先導するマルクス主義のカルト思想と異なる政治・宗教・哲学的思想を抱いているという理由だけで、無実の人々が臓器収奪されているという現実は、受け入れられるものではありません。

また、国家の公式な情報機関が、長期にわたる困難な調査の成果である公式報告に虚偽の疑惑を付与することは許されません。その国の政府によって制裁を受けるべきです。しかしながら、民主的で、人権と自由を尊重すべきはずの政府は、遺憾ながら何年にもわたり、民主主義、自由、人権を忘れてしまったようです。

中国での死の猛威を止めるには、私のような内部告発者だけではもはや不十分です。

程度の差こそあれ、自分の社会的、職業的、政治的環境に影響を与える立場にある皆さんは、自分に何ができるかを考える必要があります。

自由なメディアをもっと読むことから始めましょう。比較し、分析し、自分なりの結論を出しましょう。現在の主流メディアはそのようなことはしないからです。

自分には何もできないと思わないでください。そうでなければ、なぜ中国共産党はメディアを操作するために多額の資金を費やすのでしょうか? あなたの考えを操作するためではないでしょうか?

真実を探し求め見つけることから始めることは、容易ではないかもしれませんが有益です。表現の自由と、現在隷属状態にある報道の自由を守ることの重要性が判断できるようになります。同時に、(演説で公然と真実を嫌悪する態度を取る)国家と国家元首が脅かしている人権を守ることにもつながります。

ご清聴ありがとうございました。

 

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4. Hataru Nomura

野村旗守

日本:ジャーナリスト 1963年生―2022年没

立教大学文学部史学科卒。在日韓国人向けの雑誌の編集を経てフリーランス・ライターになる。

著書に『北朝鮮送金疑惑』(文春文庫)、『Z(革マル派)の研究』(月曜評論社)、共著に『わが朝鮮総連の罪と罰』(文藝春秋)、『ザ・在日特権』(宝島社)、『現代日本の闇を動かす「在日人脈」』(宝島社)、『中国は崩壊しない 「毛沢東」が生きている限り』(文藝春秋)、編著に『北朝鮮利権の真相』I, II(宝島社)、『中国臓器移植の真実』(集広舎)など多数。

【日本語書き起こし】

始めまして、日本からSMGネットワーク事務局長の野村旗守と申します。日本ではジャーナリストをやっております。

この臓器狩りの問題、中国臓器移植の問題、3年程前からSMGネットワークという団体を作ってやってきておりまして、今世界でも世界宣言が秋には出されるであろうということになっている、日本でもようやく国会議員連盟を作ろうではないかという動きも出てきています。

3年かかってようやくここまできたんだなあという思いですけれども、特に我々が力を入れてきたのは、日本の政界に対する働きかけ、日本のメディアに対する働きかけ、日本の社会全体に対する働きかけということなんですけれども、何度も集会を開いてこの問題を訴えてきて、一般の方々で関心を持ってくれる方々もいるんですけれども、大きなうねりにならないというのは、やはり大手メディアがこの問題に対して関心は示してくれるんですが、この問題を取り上げてくれないのが最大の原因になっている。

2016年にアメリカの下院議院で決議が出た時に、こんなことを言われました。主要メディアがこの問題を扱わないのはジャーナリズムの歴史に対する冒涜であると言いました。日本も同じように、日本のメディアも全く動こうとしません。というのは日本のメディアの中には中国に対する遠慮、贖罪意識、過去の戦争で日本が中国に被害を与えたというような贖罪意識が非常に強いものですから、中国の悪口を言ってはいけないという教育を日本のメディアとアカデミズム、教育界が広く中国に対する恐怖症を煽っているという現実があって、中国の悪い面は報道しないと、これは日本社会の特質ですけれども日本には触らぬ神に祟り無しという言葉があります。

要するにやばいことはやめておこうと、近づかないでおこうと、この問題がメジャーになってきたら自分たちも後からやる。そういう考えがあります。

この問題に関しては、2000年代の初め頃から日本の法輪功の人たちがこれだけ犠牲になっているということで国会の前でもメディアを通じて、自分たちの媒体を通じて、街頭で、いろいろなところで訴えかけてきているが、全く広まっていない。

日本のメディアが取り上げていないのが最大の原因であると考えられます。今現在も毎年10万近い人々が殺されているという推計もあるけれども、こういった10万単位の無辜(むこ)の民の命が奪われている最大の原因は、各国のメディア、日本の場合は特にメディアの責任が大きい。

世界中がストップ・メディカル・ジェノサイドということで、医療虐殺やめろ、臓器狩りやめろということで、やめないなら中国の製品を一切買わないぞと、不買運動、あるいは中国人にビザを出すなとか、中国に対するボイコット運動も起こりえるはずですが、大きな声にならないということは、最大の原因はメディアです。

日本の場合メディアが何も言わないから政治も動かない、この問題についてメディアが動くのは、ジャーナリズムの使命だと思っていますが、世界の中で一番重きを置かれている人間の命、人間の権利に日本のメディアがあまりにも無神経であり過ぎる。

触らぬ神に祟り無し、中国の機嫌を損ねるようなことはしないという、メディアの臆病な体質が臓器狩りの問題を外部に広めていない最大の原因であると思っている。

広めないどころか逆に中国の臓器移植、臓器狩り問題を礼賛するような報道まであった。過去ではなくごく最近、去年、1年程前に日本であった。日本の民間放送局であるフジテレビで放送された番組で、中国の技能実習生の20代の女の子が心臓の重い病気にかかってしまった。この病気を治すためには移植手術しかないということで、日本の病院、日本の医師、中国の領事館、中国政府が一致協力してチャーター便を飛ばし、彼女一人のために飛行機を飛ばし、武漢の病院に連れて行き移植手術を受けさせた。彼女のために用意された心臓が4つあったそうです。彼女のために4人のドナーが用意されていた。移植手術が上手くいったということは、日本の社会に対して中国の移植医療はこんなに早いよ、こんなに安くできるよということを宣伝する絶好の機会と捉えた中国政府と日本の民間病院の連携によってこれだけの迅速な手術が行われたということを日本の報道を使命としているテレビ局がまるで中国のプロパガンダに加担しているような、放送をした。

これは大きな問題であるということで我々SMGネットワークとしてこの問題を訴えるため何度も集会を開き、放送局の社長にまで手紙を書き、インターネットでもこの問題は由々しき問題であると何度も訴えてきました。お陰様で、あの番組を見ていた視聴者の方から誤解はだいぶ解けたと思います。

それでも普段インターネットに触れることのないような人たち、テレビしか見ない人たちはあの番組を鵜呑みにして中国の殺人産業に加担してしまうことになってしまうかもしれない。非常に残念な放送だったと思う。

日本のメディアはこの問題について無知すぎると、問題意識がなさ過ぎると、痛感している。メディアの人たちに対してこれから強く啓蒙していこうと、我々SMGネットワークは日々活動している次第です。

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5. Zoé Valdés 

ゾイ・ヴァルデス

キューバ:ジャーナリスト

ジャーナリスト、著述家、撮影監督、ビジュアルアーティスト。40年以上にわたり多作に著述し、映画監督・プロデューサーとしても活躍。亡命先で、キューバと海外の共産主義的圧政に立ち向かってきた。パリのソルボンヌ大学、ハーバード大学、フィールズ大学、ロンドンのクイーン・メアリー大学など、多くのアイビーリーグ大学やカレッジで教授や名誉ある客員講師授を務めてきた。 

【日本語訳】

演題:中国の共産主義の蛮行を止めなければならない

自由、人権、人間性、生命にとって非常に重要なこのサミットにお招きいただき、ありがとうございます。

皆様ご存知の通り、私は長年、キューバのために、また他の国のために、特に今回は中国のために共産主義と戦ってきました。

今日、中国での中国共産党による、現在も続く、臓器収奪、臓器売買の実態についてお話しします。つまり、政治犯、そして信念や精神性や「善(慈悲心)」を実践するがために迫害されている人々から、臓器が強制的に摘出されていることについてです。今日ここにいらっしゃる方々の多くは、すでによくご存知だと思います。

私の演題は『中国の共産主義の蛮行を止めなければならない』です。抜粋したものを読み上げますが、議論や分析もします。

投獄された中国の反体制派の人々から臓器を強制的に摘出することは、残虐で野蛮な行為であり、中世期の最悪の犯罪であり、共産主義の行為の典型です。共産主義による全体主義体制は、人間性への暴挙・破壊行為を生み出しています。これらの残虐行為は、しばしば見過ごされたり、忘れられたりしています。共産主義が人類の生命と自由の権利の上に自分たちのイデオロギーを置き、この行為を正当化しようとしていると私たちは見解します。

私たち、知識人やジャーナリストは、「イデオロギー」というアヘンより上に存在します。今日の私の公演の目的は、私たちに課された義務を呼び覚ますことです。レイモンド・アロン氏は著書『The Opium of Intellectuals(知識人のアヘン)』の中で、「アヘンとは共産左翼だ」と事実に基づいて明示しています。彼らの非人間的な行為を糾弾する必要があります。このような非人間的な行為は「規律を伴う矯正」や「服従」という泥沼の底に隠れています。メディアを通して私たちの日常生活に浸透する泥沼は、ほとんどが左傾で、左派思想に依拠しています。

私は一人の人間として、一人の女性として、作家として、独立系ジャーナリストとして、キューバ人として、メスチソ(白人、アイルランド人、中国人、スペイン人、フランス人など、単一でなく多くの人種の混合)として、信念や思想、精神修養のために処罰・拷問・殺害される反体制派の人々に対する犯罪を、著書やジャーナリスト活動を通じて力の限り糾弾していきます。中国で現在判明している生体臓器収奪の主な犠牲者は、1992年より中国で数千万人が修めた法輪功(法輪大法)そしてウイグルの人々です。このような犯罪行為はすぐに停止されるべきです。

キューバでもこのようなことは起きていました。フィデル・カストロ政権下で共産主義が台頭した1960年代以来、政治犯からの採血は盛んに行われていました。銃殺刑の前、つまり最後の一撃を加える前に、4リットルの血液を抜き取り、死刑囚を貧血にさせ精神的に消耗させていました。

このような情報は長年にわたり公表されたにもかかわらず、無視されてきました。書籍が何冊か刊行されましたが、それ以上は進みませんでした。迫害の犠牲者が最期の一撃として射殺されるときは、ほぼ屍の状態でした。このことはあまり知られていませんが、何度も繰り返されました。

世界は、ほぼ全ての共産主義の行為を無視したように、カストロの独裁政治によるこれらの血なまぐさい行為を無視しました。フィデル・カストロは、囚人が売血できるほどの良好な健康状態にあることを自慢にしていました。

恐ろしい行為が起こり、支援のない孤立した糾弾がなされましたが、その結果は? 侵略されたかのような沈黙、共謀を意味する沈黙が広がりました。同じ沈黙が、中国での生体臓器収奪を包み込み、何千・何万人の反体制派や良心の囚人の命を奪い続けています。この沈黙は許されるべきではありません。

メディアは沈黙しています。メディアは距離を置いて、目の片隅で観察しています。知識を吸収するか吸収しているふりをして、他に選択肢がないときに記事にします。しかし、そのような記事は、沈黙することより悪いと言えます。彼らは共産主義に欺かれているわけではないのです。1億人以上の犠牲者を出した共産主義とその行為は、誰も欺くことはできません。しかし、形を変えて世界に浸透した共産主義の利権は、一変してソフトな名称になった政党や、共謀を意味する沈黙の壁を大学やメディアに織り込んでいくことで、非常に強大になりました。私たちは、これらも糾弾しなければなりません。

生体臓器収奪を「緊急移植」「移植ツーリズム」と呼ぶことに決めたメディアもあります。欧米人は通常、臓器を発注・購入し、手厚く取り扱われる「左派」として現地に入ります。これほど皮肉なことはありません。糾弾すべきことです。

「国連の専門家は、臓器収奪に関する信頼のおける情報を受け取ったことを深く懸念している」とドイツのメディア、DW(ドイチェ・ヴェレ)のスペイン語版が警告しました。しかし、同じ記事内に「中国は非難を否定している」と書かれていました。中共が否定することは当然でしょう。徹底調査もできません。中共政権が許さないからです。中共政権はあらゆる手段を使って阻止することでしょう。中共の共産主義の枠を超えて行使される手段ですので、実に強力です。

当然ながら、この戦慄の真実にメディアはわからないようにして距離を置いています。チリでのアウグスト・ピノチェトによる拷問の“疑惑”や、アルゼンチンでのホルヘ・ラファエル・ビデラの独裁政権下、つまり右派の独裁政権下では起こらなかったことです。これらの疑惑に関しては、それほど調査しなくても疑うこともなく、非難することはモラルの模範として好意的に受け入れられるようでした。これに対して、臓器収奪に関するDWの記事は、本格的ではなく言及した程度のものに過ぎませんでした。自らをよく見せようとしたかのようですが、実際にはDWのイメージダウンになる類の記事でした。

「エル・エスパニョール」紙は、2017年に法輪功や政治犯からの臓器収奪の事例を非難する記事を出しました。中国から責められないように煙幕を張る意味で、中国は臓器収奪を止めたと付け加えています。読者が問題から目を逸らし(少なくともしばらくは)忘れてもらおうという背後の意図が窺えます。その意図の通りになりました。しかし、一旦は道徳に帰したかのように見えましたが、中国は収奪臓器の取引を再開し、把握不可能なほどに膨れ上がった国際的な闇市場で、途方もない資金を稼いでいることが判明しました。自由社会のメディアは、より頻繁に、より緊急性をもって取り上げるべきです。人間性・自由の全てに関わる問題です。

中国人の友人に、メディアにおける情報不足や、目に見える恐怖、見えない恐怖について話したところ、彼はこう言いました:「“恐怖は人を麻痺させる”とおっしゃいましたね。左派が発信恐怖は、国際社会のすべてを麻痺させてきました。実は“メディア”自体がその“恐怖”なのです…」。何と明確な説明でしょう。なぜメディアに自由がないか、少なくとも自由がここまで制限されてしまった理由も付け加えたいと思います。いわゆる第四身分(訳注:ジャーナリストやマスコミ)が、呪いの言葉「ウルビ・エト・オルビ」(ローマ法王による公式の祝福)を支配する第一身分(国王または聖職者)と、危険で邪悪な同盟を結んだのです。

メディアは弱体化し、信頼性と自由の面で傷を負っています。メディアは情報を提供せず、非難もせず、調査もしません。代わりに、情報を写し、ぼかし、消去し、消滅させます。現在のメディアは、共産主義とその恐怖との同盟者です。私たちはこのことを緊急に非難しなければなりません。

作家やジャーナリストで、自らの危険を冒してでも告発しようと決意した者は、出版社から門戸を閉ざされます。新聞社からも締め出されます。私たちの行動は制限され、私たちの思想や非難する自由 ― 私たちの仕事や生活が拠り所とするもの、私たちの命や家族の命が拠り所とするものすべて ー は検閲されます。私たちが亡命を余儀なくされた独裁政権や専制政治下で起こったことと同じです。私たちジャーナリストや作家は、国を支配する暴君たちによって追い詰められ、死の脅威にさらされており、通信する亡命者も含めて欠席裁判にかけられることさえあります。これがキューバの現状です。キューバの政令法35号は、専制政治に疑問を投じる亡命者を起訴し、亡命者を非難すると同時に、欠席裁判で有罪判決を下すことを可能にしています。

かつて中国共産党の全体主義は、キューバを「小さな大覇権国」と呼んでいましたが、ソ連が消滅した現在、競合やイデオロギー上の合意も過去のものとなり、真に「大覇権国」になりうるのは中国だけだと想定されます。タリバンのテロに襲われ、アメリカからも世界からも見捨てられたアフガニスタンで起こったことを考えれば、遺憾ながらこれが現実であることに疑いの余地はないでしょう。

お金は恐怖を隠すのに役立ちます。中国は金を払う、と彼らは言います。中国はたしかに、“公式”見解を押し付け、真相を否定するような怪しいジャーナリストや新聞社を買収するときは、お金を払います。メディアを黙らせるために買収するわけです。中国は恥もなく買収を繰り返し、厳格に、迅速にそしてふんだんに支払います。怠惰で、権力に従順であるように教え込まれた作家たちのために賞を買収します。その証拠は?―ありません。疑惑、口伝えに過ぎません。迫害されたキューバの政治家としての私の個人的な体験もありますが、証拠として提示することはできません。私たちは支援なしではほとんど何もできない状況です。共産主義とその支援勢力が証拠を隠滅し、証拠を提示することを決意した人々も滅ぼされるからです。彼らの試みが成功したこともあります。信頼を失わせ、殺害を通して、証拠を粉砕し、引き裂き、消滅させ、消去するのです。

私たちは共産主義が犯したこれらの非行を糾弾しなければなりません。それではどこで?私たちに残されたメディアや空間はあるのでしょうか? なければ、メディアや発言のスペースを私たちが立ち上げるべきです。これが私のやろうとしていることです。資源も何もありませんが、真実と善の心があります。いかなる者も、魂・良心にこのような重荷を背負って生きるべきではありません。安らかに夜眠れるようになるべきです。私たちには皆、尊厳のある生活と自由を享受する権利があります。中国共産主義による人権濫用は、完全に停止されるべきです。

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6. Jiang_Li

江莉(ジアン・リ)

中国/米国: 証言者 法輪功学習者

中国大陸出身。現在は米国在住。

【日本語訳】

私の名前は江莉です。私の父、江錫清は中国の主要都市である重慶市の江津区で地方税務局の職員として働いていました。父は1996年に法輪大法(法輪功)を修めるようになって以来、修煉をあきらめたことはありませんでした。2000年末から2001年初頭にかけて、父は拉致され、重慶市江津区の洗脳班に1ヶ月間、収容されました。父は減給、降格され、職場の人間に監視されるようになりました。

2008年5月14日、私の母は法輪功の真相を明らかにする資料を配布していた時に通報されました。江津区の610弁公室と公安局、中国共産党中央政法委員会、地方税務局の約20人が父の家を捜索し、『轉法輪』(法輪大法/法輪功の主著)のコピー、プリンター、中国共産党から脱党した人のリストなどの所持品を没収しました。父は彼らに拉致され、江津区の拘置所に1カ月間拘束された後、西山平の労働教養所(再教育施設)に1年間収容されました。

2009年1月27日(旧暦1月2日)の午後3時過ぎ、私は家族と一緒に重慶市の西山平労働教養所にいる父・江西清を訪ねました。その時、父は元気そうでした。翌日、2009年1月28日午後3時40分、家族の一員である江平が、西山平労働教養所から電話を受け、父・江西清がその日の午後2時40分に死亡したと知らされました。電話の主は、私たちに相手先不明の電話番号を教え、電話を切りました。私たち家族は、すぐに車で父・江西清に会いに行きました。重慶市の石家良葬儀場に着くと、たくさんのパトカーが停まっていました。私たちは葬儀場の一室に連れていかれ、そこでの規則を通告されました。1)遺体の確認時間は5分。2)カメラ、ビデオ、通信機器は使用禁止。3)冷凍庫の中で遺体の頭部を見ることができるのは、2人のみ、という内容でした。私服警官が、家族の江宏と張大明を冷凍庫に案内しました。彼らは冷凍庫のドアの前でボディチェックを受け、その後、誰かが「冷凍庫を開けろ、頭しか見てはいけない」と言いました。

その場にいた一人が冷凍庫を開けました(2段あり、1段に3区画ありました)。父の江西清は、2段目の中央の区画でした。江弘は爪先立ちで父を見ました。父の顔を手で触ると、父の人中(鼻から上唇まで垂直に伸びる溝)がまだ温かいことに気づきました。彼はショックを受け、「父さんはまだ生きている」と叫びました。その場にいた人たちは皆、顔を見合わせて呆然とした。それを聞いたもう一人の家族、江宏斌は、急いで冷凍庫に駆け込み、父の半身を引きずり出して胸を触りました。まだ温かかったのです。そして、家族全員が中に入りました。みんなで父の体を触ってみると、確かにまだ温かいのです。それから、私たち7人は冷凍庫から江西清の体を床に引きずり出しました。私の家族は「早く!彼を助けて! 父を助けてください!」と叫びました。私たちは父の服のボタンを外して調べようとし、姉が父に心肺蘇生術を施そうとしていたところ、私服警官たちが突然正気に戻りました。その中の一人の女性が、「どうあろうと病院で発行された死亡診断書があります」と言いました。私は「お父さんを持ち上げて、傷やあざがないか確認して」と言いました。ある者は父を持ち上げ、またある者は父のボタンを外しましたが、江紅、江莉、江平、張大明ら7人は無理やり冷凍庫の外に引きずり出されてしまいました。私服警官は李佳のカメラを奪いました。冷凍庫から引きずり出されて床に横たわる父の身体を、李佳はデジタルカメラで撮影しましたが、私服警官が李佳のカメラを奪い、3枚の写真は削除されました。江莉の手もひっかかれ負傷しました。警官は父の身体を冷凍庫に押し戻し、私たちに火葬に同意する書類にすぐ署名するようにと言いました。私たちは「父は死んでいないから、署名はしない」ときっぱり断りました。しかし彼らは「家族の同意がなくても火葬はできる」とまで言いました。

その時、江宏斌は携帯電話から110番で警察に通報しました(携帯電話番号:13310210277)。電話の応答者は 「どこで起こったのか?」と聞いてきました。江宏必は「重慶市北碚区遺体・外観葬儀場の検問所です。報告したいことがあります。父は死んでいません。なぜ冷凍庫に入れられていたのですか?私は助けを求めて110番しています。早く人を送ってください!」110番の応答者は、お父さんを冷凍しないように警官に頼みなさいと言って電話を切りました。江宏必は急いで冷凍庫に戻り、私服警官に父を凍らせないで、床の上に寝かしておくよう求めました。そして、江紅と江平にも父を見守るよう頼みました。しかし、大勢の私服警官のうちの数名に、家族の一人が取り押さえられました。

翌日、2009年1月29日、私と一番上の姉は重慶市公安局と重慶市人民政府に報告し、弁護士を探そうとしました。父がなぜ労働教養所に送られたのかを尋ねられたので、法輪功の修煉をしていたことを告げると「法輪功の案件は受け付けていません」ときっぱりと断られました。

私の家族は皆、法輪功を修煉しています。私の母は不法に禁錮刑8年を受け、一番上の姉と兄は不法に労働教養所での3年の収監を宣告され、長兄は現在はタイの移民収容所に拘留されています。3番目の姉は、不法に拘束され、洗脳教育を受け、監視され、尾行され、その後、強制的に職を失いました。上海市公安局の副局長である程九龍は、上海航空の私の職場に圧力をかけ、私が父の死について漏らせば解雇されると言ってきました。私は3ヶ月間その圧力に耐えながら、父が報われるように正義がなされるために戦うことを主張しました。そして2009年12月に解雇されました。

2009年5月13日、私たちは北京の弁護士、李春富と張凱訳を雇いました。彼らが調査と証拠収集のために父の家に到着すると、江津区公安局、610弁公室、中国共産党中央政法委員会、九江警察署、補助警察、公安総合管理の徳感事務所、地元の街道事務所と住民委員会の100人以上が、私たちの家を包囲しました。彼らは家に押し入り、二人の弁護士を激しく殴りました。李春富弁護士の両手と両耳は殴られて出血しました。張凱弁護士は、地面に踏みつけられて猛烈に殴られ、眼鏡が破損しました。二人の弁護士の携帯電話、パソコン、弁護士免許証は取り上げられ、彼らは後ろ手に縛られました。私の姉、兄、義理の姉も殴打され負傷しました。二人の弁護士と兄は殴られた後、拉致され、九江警察署に拘留されました。ここで張凱弁護士は、鉄の檻に閉じ込められ、吊るされ、激しく殴られた後、恐怖症に苦しむようになりました。

2009年6月、重慶市江津区人民検察院から派遣された者が上海の私の居場所を探しあて、次の条件に承諾するよう求めました。つまり、父の事件を私的に解決し、賠償金として30万元を受け取れば、母(禁錮刑8年の宣告)が保釈される。私は拒否しました。

2009年9月、上海市公安局の副局長である程九龍(Cheng Jiu-longの音訳)氏は、私の所属する上海航空の職場に圧力をかけました。そのため、私は2009年12月に解雇されました。2013年7月、重慶市江津区公安局は、再び上海にいる私の居場所を探し出し、父の事件を私的に解決するよう求めてきました。彼らの条件は、父のための正義を求めなければ、希望する額をこちらから指定できるというものでした。私は断りました。私は彼らに、父の事件での冤罪が晴らされない限り、私は訴え続けると伝えました。

結論

国際社会に、父は胸がまだ温かいうちに葬儀場の冷凍庫に押し込まれたのだということを伝えたいです。その場にいた警官たちは、家族が父を救い出しチェックすることを妨げました。父の臓器を収奪し、家族の立ち会いも同意もないのに、火葬したことが録音で証明されています。このような人命を甚だしく軽んじ無視するような行為は、国家の法令に違反するものです。私たちは、法医学の専門家(上海、北京、雲南省など)や弁護士に検死報告書を見せましたが、全員一致で父の死因は不自然であると結論を出しました。父が拷問を受けて外傷を負ったか、生きたまま臓器を摘出されたかは、当時、遺体を調べることができなかったので、物的な直接証拠はありません。

2015年6月、私は中国共産党の江沢民元国家主席を告発するために、最高裁判所、最高保護区、公安部に出向きました。江沢民は、数十万人の法輪功の家族に起こった大規模な悲劇を引き起こした極悪非道な犯人です。私はここに、世界中の善良で高潔な人々に、力を合わせて中国共産党による悪事を止め、法輪功への迫害を終わらせ、私の父だけでなく、死亡あるいは負傷したすべての法輪功学習者への迫害に加担した人々が裁かれるよう呼びかけます。

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