米国務省の元高官はこのほど、シンクタンクが開催した討論会で、ローマ教皇庁(バチカン)は中国当局から莫大な資金提供を受けたとの見方を示し、資金の流れなどを調査すべきだと主張した。
米シンクタンク、ハドソン研究所は18日、「中国の宗教戦争(China’s War on Religion)」と題した討論会を開いた。米法学者で、国務次官補(民主主義・人権・労働担当)を務めたロバート・デストロ氏が出席した。
デストロ氏は、西側諸国で影響力を拡大し、行使しようとしている中国当局は「脅しなどの手法がうまく行かない場合、金銭で人心を買収するやり方を取る」と指摘した。
「バチカンは中国から資金提供を受けないと思わないでください。私は、バチカンはすでに受け取ったと考えている。例えば、裏取引。目に見えない形で中国側の資金を受けたかもしれない」
同氏は、中国当局とローマ教皇庁との資金のやりとりを調べる必要があると強調した。
大紀元はデストロ氏の指摘を巡って、バチカン報道室に取材を申し込んだが、21日時点、コメントは得られなかった。
米国在住の中国人牧師で作家でもある郭宝勝氏は、デストロ氏の認識を支持し、中国当局とローマ教皇庁の間に「莫大な金銭取引がある」と大紀元に語った。
郭氏は、「バチカンを独立国家として運営するには、莫大な資金が必要だ。バチカンには企業がない。バチカンは信者の寄付金に頼っている宗教団体である。しかし、このような寄付金を監督する人や国がないのが現状だ」と話した。
同氏は、中国当局は直接ローマ教皇庁に寄付金を渡すことができるとした。中国当局が承認する国内のキリスト教会の信者や、(香港や台湾、各国の)親中団体や個人も、ローマ教皇庁に寄付できる。
「私はこの寄付金の規模は非常に膨大だと考える」
郭氏は、莫大な資金提供を受けたローマ教皇庁は、対中政策において、「中国当局によるカトリック信者への宗教迫害や、法輪功学習者への弾圧、チベットや香港などでの人権侵害に対して完全に黙っている。バチカンは邪悪に妥協したと言える」と批判した。
中国当局とローマ教皇庁は2018年、司教任命権を巡って暫定合意した。20年、両国は同合意をさらに2年間延長することで意見一致した。同合意の詳細は現在も公表されていない。無神論を掲げる中国共産党政権とローマ教皇庁は、司教任命権を巡って対立し、1951年に国交を断絶した。
郭宝勝氏は、この暫定合意によって「中国当局は、当局に従順な司教を任命するほか、国内の真のカトリック信者に対して一段と抑圧することが可能だ」と話した。同氏によると、中国国内に約1000万人のカトリック信者がいる。その半分は、中国当局の取締りの対象である「地下教会」の信者だ。
「地下教会の信者は、中国当局の認可を受けている『愛国教会』を認めていない」
いっぽう、ハドソン研究所宗教の自由センター長、ニーナ・シェイ(Nina Shea)氏は18日の討論会で、中国当局がこのほど任命した福建省の新司教は「中国共産党が唱える社会主義を宣伝している」と批判した。
ローマ教皇庁科学アカデミーが2017年に開催した違法な臓器売買に関する会議に、中国衛生部(省)の元次官である黄潔夫氏を招待したことは当時、物議を醸した。
国際NGO「法輪功迫害追跡国際組織(WOIPFG)」は、黄潔夫氏は中国当局による法輪功学習者らへの強制臓器収奪に関わっていると指摘し、同氏への招待を取りやめるよう、ローマ教皇庁科学アカデミーに求めた。
中国当局が黄氏の会議参加を宣伝材料として利用することを懸念し、WOIPFGは「ローマ教皇庁は、中国当局に自国の臓器制度を自画自賛する機会を与えることになる」と糾弾した。
(翻訳編集・張哲)
(転載:https://www.epochtimes.jp/p/2021/10/80880.html)